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売れる営業 私の秘密

データ活用法で顧客つかむ 医療向け教材販売のエース 学研メディカルサポート 荒川智美さん

2017/3/1 日経産業新聞

■元編集者、訪問は効率よく

 学研ホールディングスの子会社の学研メディカルサポート(東京・品川、清水修社長)は、看護師に必要な知識を学ぶネット講座など医療分野の教材を販売する。営業企画部の荒川智美さん(29)は最年少で配属され、3年目に成績でトップに立った。契約後の丁寧なサービスが継続につながった経験から、同じ顧客に訪問を繰り返すのではなく便利な使い方の説明に重点を置く。

 配属2年目の2015年春、契約先の関東の病院を訪ねた時、看護部の部長らに聞かれた。「1人が平均でどのくらいの時間見ているのかデータで出せる?」

 学研のネット配信講座は誰がいつ視聴したか、いつテストを受けて何点だったかなどを「エクセル」のデータで取り込める。だがデータは数字の羅列。質問に回答できなかったが、後で「何とか見やすく編集できるのでは」と考え直した。

 エクセルの使い方を調べてグラフを作れるまでになり、次の訪問で分析法を教えた。訪問先がメモを取っているのを見て手順書も作った。「自信になった。注射は打てないけれどグラフは作れる」と思った。

 その病院とは今も契約が続き、看護部長は別の病院に移った後も学研のサービスを採用した。データ分析の手順書が好評で、会社でも17年4月から正式に取り入れる。サービスの契約期間は原則1年。16年度の荒川さんの顧客の契約更新率は会社平均を5ポイント上回る。

◇     ◇

 学研メディカルサポートは11年に設立し、医療系の書籍やネット講座の販売を扱う。主に看護部長らに面会の約束を取り付け、契約後は質問への応対などのサービスで病院を回る。荒川さんは現在、大阪府や京都府、滋賀県、三重県、横浜市や川崎市などを担当している。1週間の約半分は関西に出張する。

 荒川さんは学研グループで医療系の学会誌を編集する学研メディカル秀潤社(東京・品川)に新卒で入社した。「意味のある情報発信をしたい」との夢がかなったが、翌年に学研メディカルに出向となり、「まさかと思った」。関東で育ち、新幹線や自動車はほとんど利用したことがない。

 比較的新しい会社のため、引き継ぎ事項は少なかった。本を読んだり周りに聞いたりしたが、アポ入れを断られるだけで落ち込み、社内外からの問い合わせに忙殺されて移動中に涙をこぼしたこともあった。

◇     ◇

 どの地域や病院を開拓していくかや事後対応のやり方は個人に任されていた。荒川さんは事後対応で「役に立つにはどうすればいいか」を心がけた。編集の技術を使って分かりやすく説明するとうまくいった。

 同社の営業方針に「手間をかけない」がある。荒川さんも「同じ病院への訪問回数が増えている時は成績が上がっていない時。訪問を重ねないと結果が出ないのは競合他社とサービスや営業のやり方が似ているから」と冷静に見る余裕が出てきた。重要なのはサービスの趣旨や機能を正確に伝えることだ。

 訪問を断られた病院には3カ月ほど後に連絡を入れ、訪問する病院の数を優先する。最初に担当した奈良県と和歌山県では約3年で両県にある病院の2割ほどから契約を獲得した。15年度は40件以上と新規契約し、16年度の目標も今年3月末を待たずに達成する見込みだ。

 「何様だと思っているんだ」。1年目に約束の時刻ぎりぎりに着いた時に顧客から言われたことを忘れない。「事情があったとはいえ、お客さんの時間を頂いている目線が持てていなかった」。自信をつけたデータ分析の提案でも顧客目線の大切さは共通する。

 個人の経験や能力に依存しがちな営業の仕事を「もともと自信がなかった自分のような人でも成長できるようにしたい」との願望がある。「ぶっちぎり続けないと発言権はない」。主張を会社に取り入れてもらうためにも一段の成績向上を目指す。

(上原翔大)

 あらかわ・ともみ 2012年に学研ホールディングスの子会社で医療系の学会誌を編集する学研メディカル秀潤社(東京・品川)に入社。13年4月から学研メディカルサポート(同)に出向し、営業企画部に配属。現在は営業企画課のリーダーを務める。

[日経産業新聞2017年3月1日付]

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