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売れる営業 私の秘密

「噴水効果」突破口に 腕時計取り扱い百貨店5倍 カシオ計算機 畠弘紀さん

2017/2/15 日経産業新聞

■取引先の課題提示

 カシオ計算機の首都圏営業部(東京・千代田)に所属する畠弘紀さん(41)は首都圏の百貨店に腕時計の取り扱いを働きかける。相手の課題をつかんで改善策を先回りして提案する。そうしてつかんだ好機をものにしたことで評判が伝わり、2008年に今の担当になってから取り扱う店舗の数を5倍にした。

 カシオの時計を扱う首都圏の百貨店は現在、31店。畠さんが首都圏の百貨店担当になったときは、わずか6店だった。起爆剤になった案件がある。

 2014年のクリスマス商戦。たくさんの人が出入りする「大丸東京店」(東京・千代田)の1階にカシオの腕時計「オシアナス」が並んだ。3週間にわたって特設ブースを置き、全地球測位システム(GPS)の電波を受信する機能を備えた新製品などを売り込んだ。

 「やるんだったら全力でやる」。畠さんは大丸東京店に企画を提案する前、決心した。高級百貨店は何よりブランドを重視する。「イメージが下がるから、カシオの製品を取り扱うはずがない」。そう言われてアポイントメントすらも取れなかった苦い経験もした。

 「若い顧客を増やした方がいいのではないか」「訪日客の相手ができるスタッフが不足している」。畠さんは大丸東京店の仕入れ担当者と話を重ねる中で、取引先の課題を洗い出していった。

◇     ◇

 「オシアナスを店の1階に大々的に並べれば若者が立ち寄って他のフロアの売り場にもプラスになる。中国人客の関心も呼べる」。社内の様々な部門の協力を得て、オシアナスの特設ブースが店にもたらす「噴水効果」を提案書に盛り込んだ。特設ブースの販売員は店舗側が出すが、中国語を話せる説明員はカシオが雇うことにした。提案は見事に通った。

 カシオにとって過去に経験がないほど高く設定した売上高の目標も達成した。大丸東京店にはそれ以降、腕時計売り場にカシオの製品が並んだ。

 「ぜひ、うちでもやりたい」。大丸東京店の成功が伝わると、他の百貨店からも声がかかった。牙城だった首都圏の百貨店の販路をこじ開けることに成功した。畠さんを中心とした営業の結果、16年の首都圏の百貨店での売上高は08年の4倍になった。

◇     ◇

 15年ほど前、畠さんは雪が積もった岐阜県の道路を営業車で走っていた。あるホームセンターの仕入れ担当に腕時計を売り込むためだ。ホームセンターは1回の商談で1年間にどのくらいの売り場面積を割り当ててもらうかが決まる。採用されなければ1年間は見通しが立たない。「失敗したらアウト」だ。

 入社後、名古屋市の営業所に配属された。事前の調査を徹底し、相手の立場になって提案を考える手法は失敗が許されない新人時代のホームセンターへの営業で身につけた。「社内営業も大事」。当時、上司に言われたことは肝に銘じている。ふだんから各部門に顔を出し、提案を作る際に協力を取り付けられるようにする。

 ブームは終わっていたが、デザインや機能に引かれて大学時代に「Gショック」を買った。カシオの製品に魅力を感じて、入社することを決めた。洋服やアクセサリーが好きで、休日はセレクトショップを巡っては流行を探る。仕事に生かせるヒントも得ている。

 カシオの商品は値ごろ感から、最近は若者の間で「チープカシオ」との呼び方がはやっている。畠さんの営業活動にはマイナスの影響はないのか。「話題が集まるので、むしろありがたい」。実績に裏付けられているせいか、自信を隠さない。

 ゴルフも始めた。相手が地方のホームセンターから首都圏の百貨店に変わったことへの意気込みもあるだろう。「足跡を残す仕事がしたい」。人脈を築きながら、販路の開拓に精を出していく。

(ゼンフ・ミシャ)

 はた・こうき 1998年カシオ計算機入社。名古屋市の中部リストロマン営業所に配属され、ホームセンターに腕時計を販売。08年から首都圏営業部に所属し、首都圏リストロマン営業所の係長として百貨店を担当する。埼玉県出身

[日経産業新聞2017年2月15日付]

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