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キューバの最高指導者だったフィデル・カストロ氏が昨年11月に亡くなったことが大きなニュースになっていたわね。そもそもキューバってどんな国なの?

キューバについて、東裕子さん(48)と中村彩さん(27)が飯野克彦編集委員の話を聞いた。

キューバってどんな国ですか?

「カリブ海最大のキューバ島など約1600の島々からなる国で、面積は約11万平方キロと日本の本州の約半分です。人口は約1100万人。1人当たり国内総生産(GDP)は7000ドル台とされ、これは日本の5分の1ほどです」

「1511年にスペインの植民地となった後、1898年の米国とスペインによる米西戦争を経て1902年に独立しました。独立国とはいえ、米フロリダ州マイアミから150キロしか離れていないキューバは、政治的にも経済的にも米国の支配下に置かれました。第2次大戦後、ナショナリズムの高まりから反米・反政府運動が激しくなり、フィデル・カストロ氏らによるキューバ革命が59年に起きたのです」

「革命で社会主義政権となったキューバと米国は激しく対立し、キューバ政府は米国資本が握っていた土地や企業の国有化に踏み切ります。61年に米国はキューバと国交を断絶。62年には当時のソ連がキューバに核ミサイル基地を建設したことから『キューバ危機』が起き、核戦争の一歩手前までいきました。91年にソ連が崩壊した後もキューバと米国の対立は続きましたが、2015年7月、両国は54年ぶりに国交を回復し、16年11月にはフィデル・カストロ氏が死去したことで注目を集めています」

フィデル・カストロ氏はどういう人なのですか。

「1926年に地主の息子として生まれ、大学を出て弁護士になりました。5歳年下の弟ラウル・カストロ氏とともに若くして反政府活動に身を投じ、アルゼンチン生まれの医師で革命家のチェ・ゲバラらと協力してキューバ革命を成功させました。ソ連のレーニンや中国の毛沢東などと並び『革命の世紀』を象徴する人物の一人で、国内外でカリスマ的な人気を誇った一方、米国政府や、革命で亡命を余儀なくされたキューバ人などからは目の敵にされていました」

「フィデル氏は1976年に就任した国家評議会議長の座を2006年に弟のラウル氏へ譲ったものの、その後も隠然たる影響力を持ち続けました。死去でキューバの体制にどのような影響が出るか注目されましたが、ラウル議長らによる集団指導体制は今のところ盤石なようです。ラウル氏も現在85歳と高齢で、18年に引退することを表明済みです。後継は革命後に生まれた世代のディアスカネル第1副議長(56)が有力視されています」

米国との国交回復はなぜ実現したのですか。

「革命後のキューバに対して、米国は徹底した経済制裁を科しました。キューバの首都ハバナでは1950年代の米国車が今もたくさん走り回り、当時の古い街並みとともに観光資源になっています。実はこれは60年代以降の世界経済の発展からキューバが取り残されたためです。そんなキューバ経済を支えたのはソ連の支援でしたが、ソ連崩壊によって、その支援もなくなってしまったのです」

「その後のキューバ経済は厳しい状況に置かれています。産油国のベネズエラで99年に誕生した左派のチャベス政権がキューバを支援しましたが、2013年にチャベス氏が死去し、原油価格急落でベネズエラ自身が苦境に陥って、支援はおとろえました。経済を立て直すには米国との関係を改善する必要があったのです。外交的な成果を上げたいオバマ前米大統領と利害が一致したといえるでしょう。ただ、先ごろ就任したトランプ米大統領はキューバとの国交回復に批判的で、今後の両国関係は不透明になっています」

今後のキューバはどうなりますか。

「政治体制がどうなるかは見通しにくい状況ですが、指導者の世代交代で開かれた体制に向かうかどうかが注目です。経済的には、砂糖の大産地で、ニッケルなど鉱産物資源も持っています。米国に近く、美しいビーチなどもあるので、観光業に潜在的な力があります。米国の制裁解除が今後も進み、外資が導入されるようになれば、経済の好転が期待できます。昨年9月には安倍晋三首相もキューバを訪問しました。日本とキューバの関係が発展する可能性は大いにありそうです」

ちょっとウンチク


中南米で存在感、情勢へ波紋
 キューバは大国ではないが、国際的な存在感はけっこう大きい。その最大の理由は、すぐそばの超大国・米国と半世紀以上にわたって対立しながら、生き抜いてきたことだ。フィデル・カストロ氏のカリスマ性もあって、中南米では反米的な左派政権の精神的な支柱になってきた印象がある。
 米国は19世紀から中南米への干渉を強め、特に冷戦時代はしばしば抑圧的な軍事政権を露骨に支援した。結果、中南米では反米的なムードが広まり、1999年にベネズエラでチャベス政権が誕生してからは左派政権が台頭した。そのチャベス氏がいわば師匠として慕った人物こそ、フィデル氏だ。
 ここにきて中南米の左派は退潮気味だ。アルゼンチンで2015年に、ブラジルでは16年に、それぞれ中道右派への政権交代が起きた。ベネズエラではチャベス氏の後を継いだマドゥロ大統領が国民の支持を失いつつある。フィデル氏の死去とキューバの今後の動向は、中南米の政治地図に小さくない波紋を広げるだろう。
(編集委員 飯野克彦)

今回のニッキィ


東 裕子さん 保険会社勤務。2年前から中国語を勉強している。「テレビのニュースで中国の政治家が何を話しているか、だいたい聞き取れるようになりました」
中村 彩さん 金融関連企業に勤務。社会人になってから職場の部活動でバドミントンを始めた。「4月に大会出場の予定があるので、練習に一生懸命励んでいます」
[日本経済新聞夕刊2017年1月30日付]

ニッキィの大疑問」は月曜更新です。次回は2月13日の予定です。

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