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 上司や顧客との対話では「質問する力」がカギになる。人の話を、ただハイハイと聞いているだけでは、「本当にわかっているのかな」と相手や周囲は不安になるだろう。相手のこと、全体の状況、自分のすべき仕事を知るためには、どんな質問をすれば良いのだろう。
上手な質問には事前の準備が非常に大切になる

上手な質問には事前の準備が非常に大切になる

会議の場や営業先では、先輩に従い、黙ってニコニコしている若手社員がよくみられる。時に質問したいことがあっても、「こんなことを聞いたら笑われるのでは」と恐怖を感じ、つい言葉をのみ込んでしまうようだ。

質問はコミュニケーションの基本。だが、ただぶつければ良いというものではない。ビジネスマナーやスキルに詳しい、リカレントキャリア(東京・新宿)代表の松田満江さんは「まず相手の立場に立つ姿勢が大切」と説く。

日頃忙しい上司に問いたいことがあるなら、いきなり話を切り出すのでなく、前もってアポを取る。「近いうちに30分ほどお時間をいただけますか。プレゼンテーションについてご相談したいことがあります」などの声がけが必要だ。

もちろん相談には準備が必要だ。調べれば簡単にわかるようなことを質問し、相手の時間を奪わないようにする。「上司に判断を仰ぐ場合も『どうしたらいいですか』ではなく、『自分なりに調べ、対策として2つの案を考えてみたのですが』などと持ちかけると相談に乗ってもらいやすい」(松田さん)。質問して迷惑をかけたのでは、本末転倒になってしまう。

相づち大きく

一方、「本題に入る前にたあいのない質問で雑談を盛り上げておくと気持ちよく答えてもらえる」と話すのは営業マン向けの著書も多い、アタックス・セールス・アソシエイツ(事務所は東京・千代田)の社長、横山信弘さんだ。質問のポイントを徐々に絞り、互いの距離を縮めると心を開いてもらいやすい。

例えば最初は誰もが語れる天候について軽く触れ、次に時事ニュースなどの意見を求める。そのうえで、プライベートや会社の話題を振る。「ゴルフがお好きでしたね。どこのゴルフ場がお好きですか」「貴社の社名の由来を教えてください」などといった具合だ。営業先だけでなく、職場でのコミュニケーションに活用するといいだろう。

ただし、矢継ぎ早に質問を繰り出すと、相手が尋問されている気分になる。相づちをはさみながら話題を広げるといい。若い社員は緊張してリアクションが薄くなりがちなので、「少々オーバーかな」と思えるくらい抑揚をつけ、きちんと語尾を上げて聞くのがコツと横山さん。

聞く以上は、相手の返事にしっかり耳を傾ける"傾聴"も意識したい。NPO法人日本アクションラーニング協会(東京・港)代表の清宮普美代さんは、「相手の話に相づちをうつだけでなく相手の目を見てうなずくと、ちゃんと聞いているなと安心してもらえる」と話す。自分なりに話を整理し、考えながら聞くことも肝心だ。

たとえば上司から指示を受ける際、「5W1H(何を、誰が、どこで、いつ、なぜ、どのように)」のポイントをおさえて整理する。そのうえで、「こういうことですか」「この点がわからないのですが」などと問う。

繰り返し確認

確認時に有効なのが相手の言葉を繰り返す「おうむ返し」というテクニックだ。前出の松田さんによれば、おうむ返しした後、別の言葉で言い換えて確かめると、認識のずれやミスを防げる。「10月末までに提出してほしい」と言われたら「10月末までですね。31日中でよろしいですか」などと返すわけだ。

イエス・ノーで答えを求める「クローズドな質問」以外に、自由に答えてもらう「オープンな質問」も、様々な情報を引き出せる、と清宮さん。テーマが販売戦略についてなら「お客様の奥様は何とおっしゃっていますか」と立場を変えて考えてもらったり、「このサービスを導入する以前はどうしていたのですか」と別の時間軸で尋ねたりすると話が広がる。

清宮さんは「質問する力は鍛えられる」と話す。日々、機会を捉えては質問し、相手の反応を見る。得られた答えを自分の行動に生かし、その上でもっと良い質問ができないか顧みるサイクルを繰り返す。そうしているうちに自然と質問する力だけでなく、考える力が身につく。

若手だからできる質問もあるだろう。組織や業界で常識と思われていることも、思い切って「なぜ?」と問えば、聞かれた方もドキリとするものだ。自分の中に湧いた疑問を臆さず投げかけよう。

(ライター 西川 敦子)

[日本経済新聞夕刊2016年10月31日付]

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