定年が売れる小説のテーマに? 女性作家の視線に納得品田英雄 日経BPヒット総研・上席研究員

内館牧子の小説「終わった人」が好調なのを受けてなのか、講談社がおもしろい広告を展開している。「定年してからでは遅過ぎる!? 大ヒット!!『定年小説』がおもしろい」というものだ。今、“定年”は売れるテーマなのだろうか。

男性への助言が詰まった「されど“男”は愛おしい」

「終わった人」は大手銀行の出世コースから外れて子会社に行った男が定年を迎えて途方にくれた毎日を送るようになる。が、ある人物との出会いが彼の人生を変える……。1年前に発売され、じわじわと売れ続けて12万部を突破した。

その隣に並ぶのが、8月に発売になった桐野夏生の「猿の見る夢」。こちらも主人公は銀行からアパレル会社に移った60歳前の男性。勤務先では常務の椅子が見え、荻窪の実家は200坪のお屋敷で愛人もいる。恵まれているはずの能天気な彼が……。

どちらも正直、元気にしてくれる話ではないが、身に覚えのあることもあり楽しめる。

この2冊と並んで宣伝されているのが、齋藤薫のエッセー「されど“男”は愛おしい」。彼女は美容に興味のある女性なら知らぬ人はいないほど人気の美容ジャーナリスト。中高年男性に元気になってほしいといろいろテクニックを披露してくれる。

女は男のどこを見ているかに始まり、薄くなった髪の演出の仕方で男の才能を見抜くことや、デブと恰幅(かっぷく)の良さはどこで分かれるのかなどをわかりやすく解説する。

また、女性に人気のある男はどこが違うのかを教えてくれる。女ウケと女モテは違うこと、女を照れさせる男はすごくモテること、清潔感の強過ぎる男はセンスが足りないと思わせることなどだ。

同時に、女から見た男心の複雑さとばかばかしさに対する見方も鋭い。確かに男のコンプレックスと嫉妬は実に面倒くさいものだ。

この3人はいずれも60代の女性、経験を積んだ女性の見方は男とはこうも違うのかと驚かされる。「あるある」として楽しんでもいいし、「定年の予習」としても役に立つ本だ。

(日経BPヒット総研 上席研究員)

[日本経済新聞夕刊2016年10月1日付]

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