C・イーストウッドさん 「奇跡の不時着」映画化美談の陰、機長巡るドラマ

1970年代から俳優と映画監督を両立させながらキャリアを重ね、世界中のファンから新作を待ち望まれる巨匠になった。86歳の今も精力的に映画作りに取り組み「まだまだ仕事をしたい」と意気に燃える。

トム・ハンクス主演の新作「ハドソン川の奇跡」(24日公開)は、制御不能に陥った旅客機を機長の判断で川に不時着水させ、155人全員の命を救った7年前の実話を映画化した。だが単なる機長の英雄物語ではない。世間が美談に沸く裏で「判断は本当に正しかったのか」と事故調査委員会から疑われ、機長は事情聴取を受けていた。仕事への責任と誇りをかけた人間のドラマを描き出した。

映画化の理由を「ただ単にすごくいいストーリーだから。それに私自身も飛行機で着水した経験があり、気持ちがよく分かった」と語る。軍隊にいた21歳のころ、基地に戻る飛行機がトラブルに見舞われ海に着水。泳いで陸にたどり着いたという。「時速100マイル以上の速さでしぶきをあげて着水した時のあの気持ち。そんな思い出を参考にした」

今回の映画では、きちんと計画を練り上げて撮影することの大切さを実感したという。「実際に当日救助にかけつけた船長らに、事故が起きた日を再現してもらってハドソン川で撮影した。飛行機の場面は使われなくなった機体を買ってスタジオにある人工湖で撮影。ハドソン川の映像とつなげた。プランニングを重視していなかったらひどいものになっていたよ」

しだいに無駄を省いた表現手法に変わってきているという。「年齢のせいか、直接的にやろうと。長い無駄な話が入った映画は気が短くなってもう難しいね」。

(ロサンゼルス支局)

[日本経済新聞夕刊2016年9月7日付]

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