「ポケモン」で注目、旅のお供に位置ゲーム
現実とリンク
「位置ゲー」アプリの多くは、スマホの全地球測位システム(GPS)機能を活用している。GPSでプレーヤーの位置と地図情報とを組み合わせ、移動した距離や特定の場所を訪れたことなどをポイントとする。
6000ヵ所制覇も
この分野で老舗ゲームとされるのが、コロプラの「コロニーな生活」だ。移動した距離に応じて与えられたポイントをゲーム内の通貨と換金し、水、酸素、食料を購入。それらを使って自分自身の街のようなコロニーを大きく充実させていく。スマホが登場する以前の2003年に運用が始まり、コロプラは位置情報ゲームを集めたプラットフォームを10年に開設。登録者数は300万人を超えるという。
移動するだけではおもしろみがない。同ゲームの場合、全国津々浦々に900種類以上の「お土産」が用意されている。別の街に行った際などに位置情報を登録すると、隠されていた「横須賀海軍カレー」のようなお土産アイテムが購入でき、ゲーム仲間と交換できる。このほか、全国200店舗と提携し、現実世界で伝統工芸品や特産物などの土産物を買うと、ゲーム内で使えるアイテムのシリアルナンバーが入ったカードをもらえる。店舗を集めた物産展を東京都内の百貨店で開いた実績もある。
マピオン(東京・港)の運営する「ケータイ国盗り合戦」はシンプルでも奥が深い。地図情報を扱う会社のゲームだけに、地図を区分けして、スタンプラリーの感覚で全国を塗りつぶしていくのが特徴だ。ただ、その数は実に600。しかも13年からはその10倍の6000カ所に区分したモードも導入した。
離島なども含まれているため、運営側も簡単にはクリアされないだろうと高をくくっていたが、わずか3年で20人以上のプレーヤーが6000カ所を達成したという。利用者層は30~40代の会社員が大半を占め、出張などの際に遊ばれているようだ。実際にプレーヤー同士が会うイベントも定期的に開いており、マピオンによると「リアルにも交流できるのが楽しみといった声があがっている」という。
地域限定品を収集
熱烈なファン層を作り上げた秘訣は、プレーヤーの収集意欲を刺激した点にある。地域限定のアイテムや武将キャラクターなどを用意してあるうえ、大手の鉄道会社や百貨店、地域の商店街などとコラボレーションした限定品も多い。100万人以上のプレーヤーがスマホを片手に、「国盗り」やアイテム探しのために全国を巡っている。
鉄道に密着して特徴を出すのがモバイルファクトリーの「ステーションメモリーズ!」。JR、私鉄、地下鉄の各駅に止まってチェックインすると、一定のポイントが与えられる。ポイントで自分の選んだ女の子のキャラクターを育成して楽しむ。同社も鉄道会社などと連携したキャンペーンを積極的に展開しており、15年の参加実績は3万人弱だったとしている。
各ゲームは、駅などで短時間利用すれば済むので、ポケモンで社会問題化しているゲームに夢中になって公共施設への不法侵入や事故といったケースは起きていないという。
ゲームというとスマホの画面などに張り付いて閉じこもりがちなイメージが強い。位置ゲーの強みは移動をともない、現実とも密接につながっていることだ。ポケモンも同様の取り組みを進めており、東日本大震災で被災した宮城県などと連携することを決めた。旅行の際、ゲームがツアーガイド代わりになってくれるかもしれない。
(メディア戦略部 北爪匡)
[日本経済新聞夕刊2016年8月25日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界