渡辺貞夫さん 歌えるビバップ目指す
1970年代後半から80年代にフュージョンのヒット作を連発し、ジャズというジャンルの枠を広げた人でもあるが「僕のルーツはあくまでもビバップ」と話す。ビバップはモダンジャズの原型にして保守本流ともいえるスタイルだ。9月3日夜公演のトリとして出演する国内最大級のジャズフェスティバル、第15回「東京JAZZ」(9月2~4日)でも「ビバップをやります」と宣言する。
今のジャズの最前線はファンクやヒップホップをはじめ、様々なタイプの音楽を取り入れて多様化している。「若手はそれぞれ個別に自分の音楽をやっている。それはそれで面白いのですが、僕らの時代のミュージシャンはビバップという共通語を話し、同じ曲を即興でセッションしていたのです」。今の若手もジャズの基礎としてビバップを勉強しているが「時代の空気を知らない」という。
東京JAZZで共演するのはウォレス・ルーニーやジェフ・ワッツといった50代が中心。「僕の息子に当たる年齢。あの時代の空気を肌で感じ、ビバップの中核ともいえるブルース感覚を糧にしている最後の世代です。僕らの演奏でビバップのムードを味わってもらえたらいい」
来年レコーディングする予定の新作も「僕なりのビバップのアルバムを準備しています」と明かす。「常に新鮮な音楽を目指しながら、同時にビバップのサウンドに戻りたい気分もあるんです」。現在も新作に向けて曲作りに励んでいる。「僕はいつも歌を書きたいと思っている。ビバップは器楽的な音楽ではあるけれど、歌えないメロディーは書きたくない。僕なりの歌えるビバップを目指してチャレンジしますよ」と語った。(わたなべ・さだお=ジャズサクソフォン奏者)
[日本経済新聞夕刊2016年8月15日付]
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