言葉遣い・社内編 話し方で仕事楽しく
上司が頼みごと、余計な前置きNG 部下が愚痴相談、質問+お礼と一言
「誰でもいいんだけど」。入社2年目のA子さんは、この言葉を聞くたびため息が出る。仕事を頼んでくる上司がいつも口にするのだ。部下を平等に扱っているという意味なのかもしれないが、一気に意欲がそがれる。
得意分野ほめる
部下に頼み事をするときはモチベーションが上がるような言葉をかける
「頼みごとをするときに余計な前置きをする人は多い」。クレーム対応など様々なビジネス研修を手がけるマネジメントサポートグループ代表の古谷治子さんは話す。A子さんが苦痛に思っている例以外にも「どうでもいい仕事なんだけど」「急がないんだけど」と言う人がいるが、言われた側は、それならやりたくないと思ってしまうという。
「コツは、相手がこれは得意と自認しているところをほめながら頼むこと」(古谷さん)。たとえば手書きで封筒の宛名書きを頼むなら「あなたは字がきれいだから、ぜひお願い」と言えば、頼まれた側もやる気が出る。
相手がちゅうちょしそうな大きな頼みごとをする際のコツもある。男性には「君ならできる」、女性には「君しかいない」と伝えるのが効果的。そう話すのは言葉が人にもたらす印象に詳しい感性アナリストの黒川伊保子さんだ。
「男性の場合、戸惑いの多くは、仕事への自信のなさによるので、まず自信を与えることが大事」と話す。一方女性は母親社員の場合には、仕事上の責任と家族的責任が二重にかかっていることがまだ多い。頼み事に対し、両者を両立させられるかを考えるので、「君しかいない」と、若干の負担があっても余人をもって代えがたいことを強調することが、相手の琴線に触れる。
仕事をしていれば愚痴が出ることもある。本来は友人や家族にプライベートで話すべきだが、職場の誰かに聞いてもらわなければ仕事が手につかない気持ちになった場合、どうすればいいか。古谷さんは、若手が愚痴をこぼす場合のコツを「『先輩はどう思いますか?』など質問をセットにするといい」と話す。
そう聞かれれば、先輩は頼られていると感じ、悪い気分はしない。もっともこうした会話は、昼休みやアフター5など勤務時間外に話すのが鉄則。最後にはお礼と共に「さすがです」「スッキリしました」などの言葉を添えよう。時間を割いて愚痴を聞いた側にとって、それらの言葉があるとないとでは大違いだ。
ときには先輩などに嫌みを言われることもあるかもしれない。たとえば「あなたは部長のお気に入りだから」などと当てこすられたらどう返すか。そんなときは「私が部長を気に入っているんです」と返せばいいと黒川さん。相手は何も反論できないし、上司の耳に入ってもなんら問題はない。むしろうれしいと思うだろう。
もちろん、いじわるはないに越したことはない。古谷さんは周囲に対し「名前を呼んで挨拶」「感謝」「ほめる」の3つを言葉で表現すれば、相手の態度は軟化していくものだと話す。確かに、あいさつ一つにしても「○○さん、おはようございます」と名前がつくだけで、印象はガラリと変わる。ほめるときは特に第三者に伝えると効果絶大だ、と古谷さんは話す。
メールも気配り
今日では社内メールをやりとりする際の言葉選びも重要だ。一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事の平野友朗さんは、「以前お伝えした通り」というフレーズは相手を不快にさせる恐れがあると忠告する。「本人は何度も説明したとしても上司は読んでいない可能性がある。責めている印象になるので言わない方がいい」(平野さん)
「よく分からないので再度ご説明お願いします」も使わない方が良い。この場合は「誤解を生みたくないので」と理由を加えたり「資料作成ありがとうございます」など、まずお礼を前置きするとよい、と平野さん。社内だからと気を抜かず、言葉足らずにならないことが大切だ。
(ライター ヨダ エリ)