ジャングル・ブック
自然を再現、CGの到達点
木漏れ日が差す森。葉の一枚一枚が光る。樹上を駆ける裸の少年。オオカミたちと黒ヒョウが追う……。
R・キプリングの児童文学で、ディズニーのアニメ映画でも知られる「ジャングル・ブック」の実写版だ。実写といっても主人公の少年モーグリ(ニール・セディ)以外はすべてコンピューター・グラフィックス(CG)によるキャラクター。トラやクマといった野生動物たちはもちろん、密林も草原もCGだという。
乳児のころヒョウのバギーラに拾われ、気高く公平な首領アキーラが率いるオオカミの群れに預けられたモーグリは、母オオカミのラクシャの愛情を受けて、ジャングルの中でたくましい少年に育っていた。
その平穏な日々を脅かすように、人間を憎む手負いのトラ、シア・カーンが現れる。アキーラに人間の子を差し出せと要求し「仲間が犠牲になっていいのか」と脅す。モーグリは群れを去ると申し出、バギーラと共に人間の村を目指す。しかしシア・カーンに襲われ、独り密林をさまよう。
モーグリは「一匹は仲間のために尽くし、仲間は一匹のために立ちあがる」というジャングルのおきてをアキーラに学ぶと同時に、オオカミらしく生きるために道具を使うことを禁じられていた。しかし群れを離れ、ヘビ、サル、ゾウなど様々な動物と出会うことで自我に目覚め、独りで生きるすべを自ら探っていく。お調子者でお気楽なクマのバルーにはありのままの人生を楽しむことを教わる。
そしてシア・カーンとの対決の時が来る。人間らしさに目覚めた少年は火と道具を携え、ジャングルのおきてを守るために闘う。
人間らしさと自然のルールが対立から調和へ向かうのが、この実写版の特徴で、現代的なところだ。動物の毛、風にそよぐ草、流れる水など、リアルなCGが映像技術の到達点を示す。1時間46分。
★★★★
(編集委員 古賀重樹)
[日本経済新聞夕刊2016年8月12日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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