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隠れた天然資源 千葉はヨードの世界的産地 ガス田の地下水に含有 薬や液晶に用途

2016/8/9 日本経済新聞 朝刊

天然資源に乏しい日本だが、世界でも有数の生産量を誇るものがある。医薬品からハイテク素材まで幅広い用途があるヨードだ。元素周期表では原子番号53のヨウ素として掲載される黒紫色の個体だが、年配の方なら殺菌・消毒薬のヨードチンキでなじみがあるかもしれない。国内では特に千葉県の生産量が多く、ヨードの世界的な供給源になっている。

ヨードは常温でも気化しやすく臭気がある

千葉県では外房地域で6社がヨードを生産している。最大手の伊勢化学工業の推定によると、2015年度の世界の生産量は3万2800トン。国別ではチリがトップ、日本は2位で、生産量は1万300トンにのぼる。日本では千葉県の生産量が全体の8割を占めており、千葉県単独でみても世界の生産量の4分の1になる計算だ。生産量のうち4割を輸出している。

千葉県の生産量が多いのは、地下に水溶性の天然ガスが眠る南関東ガス田があるためだ。300万~40万年前にできたとされる地層には、ガスとヨードを豊富に含んだ地下水(かん水)があり、このかん水からガスとヨードを取り出すことができる。南関東ガス田には現在の生産量で換算して800年分のガスの可採埋蔵量があるとされ、ヨードも大量に存在する。

千葉県のかん水に多量のヨードが含まれるのは、陸地がかつて海底にあったとき、海藻などの有機物が堆積し、これらに含まれるヨードが濃縮されて残ったためと考えられている。ヨードは海水や土壌にも含まれるが、濃度が低く、生産しても採算に合わない。一方、かん水に含まれるヨードの濃度は海水の2000倍近いとされ、千葉県では1934年に大多喜町でかん水からヨードの生産が始まっている。

ヨードにはレントゲン造影剤やうがい薬・消毒薬、工業用触媒など、さまざまな用途がある。世界の生産量は増加傾向にあり「最近は液晶パネルに使う偏光フィルムなどの用途が伸びている」(K&Oエナジーグループ)。また需要量はごくわずかだが、東京電力福島第1原子力発電所の事故後には、甲状腺内部被ばくの低減策として安定ヨウ素剤が注目された。原油やレアアースのような派手さはないが、千葉県発の天然資源が国内外で人々の暮らしを支えている。

■モンゴルやカンボジア、スリランカにヨード提供

国際協力の一環で昨年はスリランカにヨードを提供した

ヨードは新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンの構成成分で、人間の成長に欠かせない。ヨードが不足すると甲状腺肥大や発育不全などの問題が生じる。

日本人はヨードが多く含まれる海藻類をよく食べるためあまり問題にならないが、海に面していない国や物流の遅れた国では欠乏症が課題になるところもある。千葉県は業界団体などと協力し、これまでモンゴル、カンボジア、スリランカにヨードを提供している。

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