罪の声 塩田武士著
過去の事件題材に謎解き
30数年の後、グリコ森永事件の真相を絵解きする。昭和は遠くなるばかりでも、未解決事件の謎は常に「新しい」というわけ。
「歴史の闇」に迫るのは、半端な事件記者と関係者の近親、自分では知らずに事件に加担させられていた男だ。2人の調査が交互に進み、彼らが出会うところで謎の全貌が明らかになる、という手堅い構成。
犯人グループは、さまざまな思惑で寄り集まった集団だった。「なるほどこういう事だったのか」と納得できる「解答」だ。主人公は「犯罪の虚(むな)しさ」を強調する。それは作者の「罪を裁く声」でもある。小説は、利用された子供の現在を追い、償いの時を考えさせて終わる。
★★★★
(評論家 野崎六助)
[日本経済新聞夕刊2016年8月4日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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