タングステンおじさん オリヴァー・サックス著少年時代の化学への傾倒

(斉藤隆央訳、ハヤカワ・ノンフィクション文庫・1240円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

脳神経科医として有名なオリヴァー・サックスの一風変わった自伝的エッセイ。どのページにも彼がこよなく愛した「鉱物」や「元素」がきらびやかに登場し、明るいとは言い難い彼の少年時代を彩っている。

題名の「タングステンおじさん」というのはタングステンを扱う会社を経営していた彼のおじで、幼いサックスをめくるめく鉱物の世界に引き込んだ張本人だ。

サックス少年の化学への傾倒は恋慕の熱さにも似て、微笑(ほほえ)ましいというより、なんだかむしろ暑苦しい(失礼!)。

それでも、医学エッセイの名手として謳(うた)われた彼ならではの筆で、読む人を元素の海深くへと誘ってくれる。待望の文庫化だ。

★★★★★

(サイエンス作家 竹内薫)

[日本経済新聞夕刊2016年7月21日付]

★★★★★ 傑作
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…

タングステンおじさん:化学と過ごした私の少年時代 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

著者 : オリヴァー・ サックス
出版 : 早川書房
価格 : 1,339円 (税込み)

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