金太郎の母を探ねて 西川照子著
伝承の形成過程をさぐる

マサカリをかついだ金太郎がクマにまたがる構図は、よく知られている。童謡で、また絵本をとおしてなじんできたという人は、少なくないだろう。
だが、金太郎を生んだのが山にすむ物の怪(け)、山姥(やまんば)であることは、あまり知られていない。子供は無垢(むく)であれとする育児観がひろがり、この伝承はかくされるようになった。
では、なぜそういうおどろおどろしい金太郎語りは、できたのだろう。著者は中世の説話や古い神話に、その形成過程をさぐっていく。そして、少々むごい母子の物語がつむぎだされていく経緯を、ときほぐす。
浦島伝、八幡信仰等々、かかわるデータの博捜が、圧倒的。万華鏡のような展開のうちに、全体を読みおえる。
★★★★
(風俗史家 井上章一)
[日本経済新聞夕刊2016年6月30日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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