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 新社会人が職場で最も頻繁にやりとりをする相手は「先輩」ではないだろうか。時に先生、時にライバル、仕事をする上で支えになるときもあれば悩みの種になるときもある。先輩と上手に付き合うためのポイントをまとめた。

「ベストな言葉遣いが分からない」。今年社会人になったばかりのAさんは悩んでいる。面倒を見てくれる先輩とは常に敬語で話しているが、同期の話しぶりを聞くと友達同士のように親しげ。「もっとくだけた方がいいのでは」と話す。

先輩との親密度を上げるには「自己開示が大切」と話す松橋さん(東京都千代田区)

先輩との親密度を上げるには「自己開示が大切」と話す松橋さん(東京都千代田区)

一般社団法人日本聴き方協会(東京・千代田)の代表理事、松橋良紀さんは「その先輩が目上の相手とどう接しているか観察するといい」と話す。そこに先輩の価値観が表れるからだ。「先輩がフランクに話していいよ、と酒席で言ってもだまされてはいけない。おおらかに見せようとしているだけの可能性もある」(松橋さん)。先輩が目上に敬語を使っているなら、敬語を使うとよいだろう。

企業などで話し方・伝え方の研修を行うアップウェブ(東京・千代田)社長の藤田尚弓さんも「礼儀を軽視しないことが大事。先輩だからとつい曖昧にしがちだが、それが嫌われるきっかけになることもある」と助言する。

相談の仕方で悩むこともあるだろう。仕事で分からないことが出たとき、すぐ相談するのと、ある程度試行錯誤してから質問するのではどちらがいいのか。

企業や団体で研修などを手がけるハイブリッドコンサルティング(東京・港)CEO、吉山勇樹さんは「仕事にとりかかる前に、相談するタイミングを先輩に伝えておくといい」と話す。例えば「2割終えた段階で相談します」といった具合だ。そうすれば先輩にも心の準備ができる。「これを続けていくことで、先輩が仕事に求める水準や期待値が分かってくる」(吉山さん)

もっとも、先輩のタイプによっても付き合い方は変わることがある。

たとえば、指示が下手な先輩には「質問力を鍛えるといい」と藤田さん。「すぐやっておいて」と言われた場合、すぐとはどれくらいかを数字で確認する。最後まで進める前の経過報告も大切だ。

すぐカッとなる短気な先輩にはどう対応すべきか。吉山さんは「話はまず結論から入るといい」と助言する。短気な人は効率やスピードを重視している。相談する際も「相談があります」ではなく、「△△の件で相談があります」など端的かつ具体的に示すといい。

年次がそう違わない先輩にライバル視されることもあるだろう。そんな時は「光栄なことと捉えるべきだ」と松橋さん。それでも嫉妬されて辛いと感じる時は、「努力をあからさまに見せるといい」と藤田さん。嫉妬が生まれるパターンは3つある。「自分と似たような人が成功」「自分が大事にしている領域で成功」「努力していない人が成功」だ。実際の努力が伝われば、先輩も、それなら仕方ないと思うかもしれない。

仕事の手柄を先輩に取られた場合も、ネガティブに捉える必要はない。むしろ「先輩のおかげで案件が取れました」と第三者に話すくらいがいいと藤田さん。人は自分の貢献を高く見積もる傾向がある。また、頑張りを見ている人はちゃんと見ているものだ。

何かにつけ「飲みニケーション」重視の先輩もいるだろう。藤田さんは「職場のコミュニケーションは時間の長さより回数が重要」という研究結果があると話す。つまり、挨拶+ひとことを伝える回数が多ければ飲み会に行かなくても良い関係は作れる。「ただ、根回しが必要な場合など、飲み会が役立つこともある。酒席を嫌うのはもったいない」(藤田さん)

逆に、仕事以外の話は一切しない先輩にはどう対応すべきか。松橋さんは「その先輩が、全員に同じ態度なら気にしなくてよい」とした上で、自分から胸襟を開くのも一手だと話す。そうすれば相手も話しやすくなるからだ。さらに、決め打ち質問も有効だという。「先輩はサッカー、お好きでは?」などと聞けば、好きなら話に乗るだろうし、「いや」と否定するだけで終わらせる人はまれ。「俺は野球派」などと自己開示せざるを得ないだろう。

先輩とのコミュニケーションで悩みがちな人は、「礼儀を重視し、相手の"好き"を引き出す」を心に刻むとよいだろう。

(ライター ヨダ エリ)

[日本経済新聞夕刊2016年6月27日付]

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