検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

電子天びんで虫の体重測定 1万分の1グラム単位まで

吉谷昭憲

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

まずは、ちょっとしたクイズといこう。

テントウ虫1匹の重さとつりあうのは、どれ?

(1)切手(2)つまようじ(3)一円玉。

正解は切手1枚分と同じ、0.05グラム。想像以上に軽くて、びっくりしたんじゃなかろうか。チャンスがあれば、手のひらに載せてみてほしい。トコトコと歩く脚の動きは感じても、重さは全く感じないはずだ。

◎ ◎ ◎

50歳から量り始める

昆虫図鑑や絵本のイラストを描いて暮らしている。趣味は昆虫観察。50歳の時に昆虫の体重を量り始め、15年で1200種類、3700個体以上を記録した。いつか日本中の昆虫を調べ、本にまとめたいと考えている。

きっかけは、1万分の1グラムまで量れる電子天びんを手に入れたこと。そのころ働いていた化学メーカーでお払い箱になったものを、譲ってもらった。何を量るかといえば、虫。図鑑に体長は載っていても体重はなく、ずっと気になっていた。

まずはテントウ虫を量ろうとしたが、途中で飛んでしまう。あれこれ試行錯誤して、文具店でおあつらえ向きのものを見つけた。粘着テープがついた小さな透明の袋だ。虫を入れ、封をして、天びんに乗せれば計測成功。虫を取りだして袋を量り、引き算する。

結果は0.05グラム。目を疑った。一円玉くらいだろうと思っていたのに、その20分の1しかない。面白くなっていろんな種類を次々と量った。

◎ ◎ ◎

アメンボ0.028グラム

オオムラサキ1.45グラム、アメンボ0.028グラム――。その年の年賀状には、虫の重さを書いた。これが大反響で、北海道大の出版会から「本にしたら絶対、面白いですよ!」と電話までかかってきた。うれしくて、ますますのめり込んだ。

生まれは山口県。家にテレビもない時代で、友達と虫捕りして遊んだ。中学で東京に引っ越しても情熱は続いた。道を究めようと東京農業大に進み、昆虫学を学んだ。

卒業しても就職する気がおきず、としまえんの昆虫館でアルバイトをした。実は学生時代、スケッチに役立つと考え、独学でイラストを学んでいた。その腕を見込まれ、展示パネルの絵を任された。出版社の方の目にとまり、イラストの仕事を受けるようになった。

大好きな昆虫の絵を描いて幸せな日々。しかし子どもが生まれるとそうも言っていられず、就職した。道ばたで虫をつかまえるため、12キロの道のりは自転車で通った。

10年あまり勤めた頃、出版社から絵本制作の話が舞い込んだ。やっぱり虫の仕事がしたい。会社をスパッとやめた。虫の体重を量り始めたのは、その5年ほど前だ。

測定を続ける中で、たくさんの発見もあった。例えば翅(はね)の大きさが同じくらいの蝶(ちょう)でも、オオムラサキはアサギマダラの6倍の1.45グラムもある。

前者は樹液を吸っている時にほかの虫が近づくと、羽をバサバサさせて追い払う。小さなからだに筋肉をギュッと詰め込んでいるんだろう。後者はフワフワと遠くまで飛ぶのが特徴。そのために細く軽くなったのだろうか。重さと行動を結びつけて、生命のふしぎに想像を巡らすのが面白い。

プーンと飛んでいるヤブ蚊を見て、「血を吸う前後でどうなるかな」と思いついたこともあった。まずは腹ぺこの状態で測定。それから腕の血を吸わせ、お腹がプクーッと膨らんだのを見届けたその時、蚊が逃げてしまった。赤く腫れた腕を悲しい気持ちで見つめつつ、虫かごから別の蚊を取りだす。実験に失敗はつきもの。虫刺されなんて、なんのその。

◎ ◎ ◎

蚊は血を吸うと2倍に

すると面白いことがわかった。血を吸った蚊は0.0028グラムで、およそ2倍。自分と同じ重さの血をお腹に入れて、スイスイと飛ぶ。虫は私たちが考えているより、ずっと力持ちなのだ。

電子天びんは少しの風でも影響を受けるから、クーラーも付けられない。夏は窓を閉め切り、汗をかきかき測定する。かなり集中するので、1日30匹が限界だ。いろんな虫を手に入れるため、新潟に半年間住んで測定に打ち込んだ時期もある。福音館書店の方が興味を持ってくれ、この4月に、子ども向け月刊誌「たくさんのふしぎ」シリーズで「昆虫の体重測定」という絵本を書いた。

何のために量るのか。そんな疑問をお持ちの方もいるだろう。重さを比べれば、新たな研究のきっかけになるかもしれない。研究を裏付ける可能性だってある。

しかし、そんなことは私にとって、どうでもよかったりする。小さな虫の、1匹1匹の体重が違う。とても量りきれないほどの、無数の虫がこの世界にはいる。そこにロマンを感じるという、ただそれだけのことなのだ。

(よしたに・あきのり=イラストレーター)

[日本経済新聞朝刊2016年5月4日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_