傀儡に非ず 上田秀人著
一族を殺された武将の慟哭
荒木村重といえば、織田信長に謀叛(むほん)をし、一族郎党をことごとく見殺しにしながら、己一人は生きのびた悪名ふんぷんたる武将として伝えられている。
だが、彼は、本当に己の命惜しさに生きのびたのだろうか。
本書は、上田秀人、著書百冊記念の書き下ろし単行本で、まさかそんな巷間(こうかん)伝えられている安易な説に与(くみ)するわけがない。
物語は、荒木義村・村重父子が、変節漢と罵られ乍(なが)ら、池田勝正をはじめ、主を変え、綱渡りのように戦国を生きてきた様が丹念に描かれている。
そして、村重が信長に仕えるようになるのは中盤以降。彼の一族討伐は、無論、謀叛のためなどではなく、村重の慟哭(どうこく)が行間から痛いほど伝わってくる。堂々たる力作。
★★★★★
(文芸評論家 縄田一男)
[日本経済新聞夕刊2016年4月28日付]
★★★★☆ 読むべし
★★★☆☆ 読み応えあり
★★☆☆☆ 価格の価値あり
★☆☆☆☆ 話題作だが…
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