大切な物、捨てずにネット保管 宅配便使い手軽に
「やっぱり愛着があるものは処分できない」。こう話すのは都内在住の会社員、塚原みさとさん(33)。そこでトランクルーム運営の寺田倉庫(東京・品川)が手がけるネット保管サービス「ミニクラ」を利用することにした。預けるのは大事な本や漫画。いつかまた読みたいと思っているうちにどんどんたまって収納に困ったという。
競売に直接出品も
ミニクラはスマートフォン(スマホ)やパソコンから申し込むと、自宅に専用の段ボールが送られてくる。それに預けたいものを入れ、指定した日時に配送業者に取りに来てもらう。預けたものを写真撮影するサービスもあり、利用者はネットの専用ページでいつでも見られる。取り出したいときは段ボールごとのほか、1点ごとに指定して自宅まで送ってもらう仕組みだ。
従来の保管サービスは倉庫まで自分で運んで行ったり、取りに行ったりする必要があった。ミニクラはこうした手間を省くことで利便性を高めた。会員数は17万人を突破。寺田倉庫のサービスエリアも関東から全国に広がった。料金は段ボール1個につき月額200~250円。倉庫から取り出す際の送料は800円だが、1年以上の預け入れで無料になる。保管を依頼するものは衣類や本のほか、子供が描いた絵など思い出の品が多いという。
自宅を片付けたくても処分に悩むケースはよくある。そうしたときは「いったん預けることで本当に必要かどうか判断しやすくなる」(柴田可那子リーダー)ようだ。ミニクラでは預けたものをヤフーのネットオークションに直接、出品できるサービスも用意している。倉庫から落札者に送られるため、自宅の住所が知られずにすむという利点があり、好評を得ている。
家電や家具などかさばるものを預かってくれるのが、ネット保管サービス会社のホワイトプラス(東京・渋谷)だ。同社の「ヒロイエ」は、提携している配送会社の専門スタッフが利用者の自宅まで荷物を受け取りに行くため、扇風機やベビーカーなど梱包が難しい荷物でも気軽に保管できるようにしている。
利用するにはスマホの専用アプリをダウンロードして会員登録する。取り出すときもスマホで日時を指定する。最短で翌日には自宅に届けてくれる。保管料金はスペースの大きさによって異なるが、月3980円から。家電や家具のほか、クリスマスツリーや五月人形など季節のイベントで使ったものを次のシーズンまで預ける人も増えている。
利用者は30~40代が中心で家族客も多い。引っ越しや子供が増えたときなどのタイミングで依頼してくるという。自分で持ち運ぶ必要がないため、「女性客の依頼も目立つ」(斎藤亮介取締役)。現在は都内に限定したサービスだが、今後、関東などにエリア拡大を予定している。
クリーニングと一体
クリーニング会社の喜久屋(東京・足立)は、衣類のクリーニングと保管を組み合わせたサービス「イークローゼット」を提供している。最長9カ月間、湿度や温度の管理が行き届いた専用倉庫で衣類や布団などを預かる。自宅で収納に困るスキー用具やベビーカーなども保管してくれる。クリーニング料金だけで、保管料はかからない。
往復の配送料はスーツ10着程度が入る専用バッグ1個につき1700円。クリーニング料が1万円を超える場合は無料になる。
実際に1万円を超えるケースが多いという。「衣替えの季節に注文が急増する」(同社)。さまざまな保管サービスの登場により、「収納」の考え方も変わりつつあるようだ。
(電子報道部 古山和弘)
[日本経済新聞夕刊2014年9月11日付]
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