氷を1個入れる ご飯をおいしく炊く達人の技
新米でも水量は変えず
「取れたて、つまり新米がおいしいという常識は捨ててください」。8月初め、東京・築地場外市場の築地食まちスタジオであった「美味しいお米の炊き方教室」。講師をつとめた隅田屋商店(東京都墨田区)の五ツ星お米マイスター、片山真一さんの話に約20人の参加者が聞き入った。
片山さんの説明はこうだ。新米は水分量が多めでしなやかさやみずみずしさが感じられるという点ではおいしい。ただそのコメの持ち味がまだ出ていない。本来の香りやうまみが感じられるのは収穫から3カ月ほどたって「熟成」されたころからだ。
今は玄米の低温管理がしっかりしており、1年たった古米でも味が大きく落ちることはほとんどない。新米が出回って値下がりした古米を選ぶのも賢い買い方だ。みずみずしい新米をさっそく試すか、じっくり古米を味わうか。今の時期ならではのぜいたくだ。
買ってきた精米はまず、プラスチック製の密封容器などに移し替えて冷暗所に保管する。冷蔵庫の野菜室に入れておくのがベスト。炊飯する少し前に冷蔵庫から出して、常温に近づけておこう。冷蔵庫で密封保存しても、なるべく2カ月以内には食べきりたい。
おいしくコメを炊く基本を表にまとめた。炊飯器の性能が向上しているので、スイッチを入れたら後は基本的におまかせ。それだけに炊く前と炊いた後が大事だ。コメを強く研がずにやさしく洗うことや、保温モードに頼らないことをこころがけよう。
新米については水の量を減らして炊いた方がいいと思っている人が多いようだ。しかし今は大半が機械乾燥しており、新米でも水分量が大幅に多いことはなく、指定量で炊いて問題ない。ただ炊けたらすぐにボウルなどに移してベタつかないようにする。
片山さんは「おいしいコメがあればおかずが一品減っても大丈夫。忙しい時もコツを押さえれば手軽においしく炊けます」と話す。
じっくり浸して早炊き
味や香りとともに、コメのおいしさを左右するのが食感だ。片山さんはコメの外がしっかりして中がやわらかい「逆アルデンテ」の食感に炊くことを推奨する。かむ回数が増えて唾液とでんぷんが混じることでコメの甘みが一段と高まるという。
この逆アルデンテに仕上げる炊き方として片山さんは、じっくり2時間浸水しておくこと、炊飯器の早炊きモードで一気に炊き上げること、など4点を教えてくれた。教室に参加し、炊きあがったコメを試食した主婦の山下妙子さんは「自分で炊いたのと大違い。ちょっとした工夫でこんなにもおいしくなるなんて驚いた」と話していた。
最近登場している新品種で人気があるのが北海道産の「ゆめぴりか」に代表される、もっちりして粘りのあるコメ。こうしたやわらかいコメを初めて食べる時は、まず最初は炊く時の水の量を少なめにしてかための食感で試してみる。その後段階的に水の量を増やしていき、自分好みの食感にたどりつくのがいい。
(高田哲生)
[日経プラスワン2014年8月30日付]
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