観光情報紹介、地元自治体がアプリ充実
外国語に対応も
東京都港区に住む唐木ひろ子さんは6月、家族と一緒に近くの商業施設へ映画を見に行った。上映までまだ時間があったので、スマホアプリ「港区まち歩きナビ」を起動。アプリを参考にしながら商業施設の周囲をゆっくり歩いて回った。
道幅や段差にも配慮
同アプリは港区が開発に深く関わった。港区の出身者も含む職員らが実際に現地を歩き、歴史や芸術などのテーマのほか、散策時間に応じたお薦めルートを25通り用意。道中の道幅や段差なども確認し、より安全なルートを優先的に表示するようにした。「買う」「食べる」などカテゴリーごとの施設ガイドも豊富に盛り込んだ。唐木さんは「紙のガイドとは違う物珍しさからか、一緒にいた家族にも好評だった」と笑顔で話す。
港区産業振興課は「区内にある豊富な観光資源を伝える方法として、多くの人が持つようになったスマホに注目した」という。観光客だけでなく、地元住民が改めて地域の魅力を発見するきっかけになることも期待しており、今後お薦めルートをさらに増やしていく考えだ。
ある地域を効率的に見て回るなら、各地のコミュニティーバスの利用が便利だ。石川県能美市のアプリ「nomistyle」は、地図上で市内185カ所のバス停留所の位置と時刻表を確認できる。ユニークな仕掛けもある。例えば、運行ルート上にある「松井秀喜ベースボールミュージアム」で、施設内に用意されたQRコードをスマホで読み込むと、地元出身で元米大リーガーの松井秀喜氏からのメッセージを再生することもできる。
増加する訪日外国人を意識したアプリも増えてきた。札幌市の「札幌いんふぉ」は宿泊施設や飲食店などでの日本のマナーや、交通機関の利用方法などを英語や中国語など多言語で解説している。
さらに観光スポットを動画で紹介するほか、無料の公衆無線LAN「Wi-Fi」の設置場所もわかる。慣れないアプリの操作方法がわからない利用者にも配慮し、トップページに「このアプリの使い方」の項目を用意した。
警報、多言語で周知
京都府と京都市が今春から正式に公開した「KYOTO Trip+」は、飲食店やイベントなどの情報に加え、警報の発令状況や現在地から避難場所へのルートといった防災情報も多言語で提供する。情報共有の機能も備えている。佐賀県と佐賀県観光連盟は来年、新設する英語や中国語など多言語対応のコールセンターと連動する観光アプリを提供する計画だ。
将来的なウエアラブル機器の普及を見越した取り組みもある。広島市や中国経済連合会など産学官でつくる「山陰・山陽スマート観光プロジェクト推進協議会」は今春、米グーグルの眼鏡型端末「グーグルグラス」をソフトバンクモバイルのアプリ「ふらっと案内」と連動させ、観光情報を配信する実証実験を同市内で実施した。
総務省が15日発表した2014年の情報通信白書によると、地方公共団体アンケート調査で多機能端末などを用いた観光情報の生成・提供をしているのは23%だった。自治体のICT(情報通信技術)への関心は高まっており、今後も観光系のアプリは増える見通しだ。
自治体が関わる観光関連アプリには地元住民を想定したものも多いが、観光客でも手軽に活用できる。スマホの画面に訪れた地域のアプリを残しておけば、その土地とのつながりを思い出すきっかけにもなりそうだ。
(電子報道部 皆上晃一)
[日本経済新聞夕刊2014年7月31日付]
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