■放置すると失明も

これに対し、「放置してはいけないのが網膜に穴が開く病気によって起こるタイプだ」と滋賀医科大学の大路正人教授は指摘する。大阪府吹田市に住むAさん(38)は今年6月のある日、目覚めたときに視界に違和感を覚えた。白い壁に目を向けると、虫のような小さな黒い点が見え、目線を横にずらすと一緒に点もずれた。こうした飛蚊症の症状が数日間続いたので、病院で眼底検査をすると、網膜の一部に穴が開いていた。

医師から「早く来てよかったですね」といわれた。放置すると失明につながる網膜剥離になる恐れがあるからだ。レーザーで穴をふさぐ治療を受けた。黒い点が見える症状は完全に消えたわけではないが、「深刻な事態にならず、ほっとしている」とAさんは話す。治療後1カ月ほどは激しい運動を控えるように言われたが、今は趣味の草野球で、以前と同じようにプレーできている。

網膜に何らかの原因で穴が開くのは「網膜裂孔」と呼ばれる。出血などが起きて硝子体に流れ込んで濁りの原因になる。その結果、飛蚊症になる。この病気タイプも中高年などで目立ち、男女差は特にないという。「網膜に開いた穴はなるべく早く塞ぐことが重要」(大路教授)。そのままにしておくと、穴から硝子体の成分が網膜の後ろ側に入り込み、穴を起点に網膜がだんだんとはがれてしまう剥離が起こるからだ。剥離が進むと、視力が低下し視野も狭くなる。

こうなると手術が必要だ。硝子体の部分にガスを注入してはがれた網膜を強制的にくっつけるといった方法をとる。「約2週間入院するのが一般的で、患者の負担が大きい」(大路教授)。ただ手術をしても、元の視力を回復するのは難しい場合もある。

飛蚊症はほかに、糖尿病網膜症による硝子体中での出血や、眼内に炎症が起こる「ぶどう膜炎」などでも発症する。

飛蚊症と「コンタクトレンズの装着や、パソコンなどの長期使用による目の酷使、紫外線などは関係がないと考えられている」と大路教授は話す。ただ「ほかの重い目の病気に比べて研究が進んでおらず、詳しく分からない点もある」(下村主任教授)。

五感のうち目からの情報が全体の約8割を占めるといわれるほど視覚は重要だ。気になる症状があれば、早めに医療機関を訪れることが肝要だ。

(新井重徳)

[日本経済新聞夕刊2014年7月25日付]

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