お薬手帳、電子化で便利に 服薬時刻通知など多機能

薬の履歴をまとめた「お薬手帳」をスマートフォン(スマホ)で管理するのが「電子お薬手帳」。薬を飲む時間を知らせるなど電子版ならではの便利な機能を満載したアプリが続々登場している。利用できる薬局が少ないのが弱点だったが、この春、薬局などの情報端末が更新され、全国で薬のデータを取り込める体制づくりが始まった。

お薬手帳とは、国内の保険薬局や医療機関で調剤された薬の履歴(調剤履歴)をまとめる手帳のこと。厚生労働省が診療報酬改定のたびに普及策を盛り込み、所持している人はかなり増えた。

「お薬手帳は常に携帯してこそ意味がある」と力説するのは日本薬剤師会副会長の三浦洋嗣さん。手帳を見れば、薬剤師はその人の病状や既往症などを推し量ることが可能。服薬状況が確認でき薬の飲み合わせの事故を防げるからだ。

「災害時や外出先で自分が倒れた時にお薬手帳は医療機関で重要な情報になる」(三浦さん)。ただ、お薬手帳を常時持ち歩いている人は、少数派にとどまる。

■震災時に威力

「スマホでお薬手帳を管理すれば携帯性が大いに高まるのではないか」。そんな観点から、ここ2年ほどの間に電子化の動きが一気に広がり始めた。きっかけになったのは2011年の東日本大震災だ。

震災時、避難先にお薬手帳を持って逃げた人は薬の服用歴や常用の薬がすぐに分かり、お薬手帳の有用性が注目された。一方で、お薬手帳を自宅に置いたままにしていた人も多かった。ところが、こうした人も携帯電話だけは持っていたという。

携帯性を高める目的で始まった「電子版」だが、小型のパソコンともいえるスマホと一体になることで、紙の手帳にない機能を数多く備える。アプリによって少しずつ違うが、日常の服薬に役立つほか、育児や介護で忙しい人にとっても便利にできている。

人気が高いのが、服用のタイミングを知らせてくれるアラーム機能。5月から実証実験中のアイセイ薬局のアプリには「服薬リマインダー」がある。自分の生活時間を入力しておけば、お薬情報に合わせて服薬の時間にアラームが鳴る。

「服薬忘れで治療効果が出ないことも多い。服薬状況をみて医師に投薬方針を相談することもできる」と同社薬剤師の安彦大路さんは期待する。

育児や介護で家族のお薬手帳を何冊も管理する人も、電子版なら複数の人のお薬情報を自分のスマホ一台で管理できるようになる。「昨年風邪をひいて飲んだ薬で具合が悪くなったのはだれだっけ?」「お父さんが毎日飲む薬が把握しきれない」といった忙しい世代の味方になりそうだ。

過去数年分のお薬情報を保管できるのも、電子版の強み。常用薬を頻繁にもらう人だと紙の手帳はあっという間に埋まってしまい、薬剤師は手帳をみても既往症や副作用などの状況を把握しにくい。スマホに長年にわたるお薬情報が残っていれば、薬剤師にとっては大いに参考になるという。

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「電子版」、診療報酬算定の対象外
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