「患者の半数近くは他の病院から紹介で受け入れている」「チーム医療を進めるため病院内の情報交換が活性化している」
3月、京都市のホテルで開かれたシンポジウム。約140人の参加者が耳を傾ける中、府立医大病院(京都市)と京都大病院(同)が、小児がんの診療や、患者・家族の支援体制などの現状を報告した。
府立医大病院は今年1月、がんの痛みを和らげる緩和ケアの病棟を新設。小児がん患者の専門チームがケアにあたる。拠点病院指定後の2013年度の相談件数は約300件で、数十件だった前年度から急増。九州や四国からも相談が寄せられたという。細井創・小児科診療部長は「小児がんは病院ごとに得意分野がある。京都大病院を含め拠点病院と患者の治療方針を相談することもある」と話す。
診断が難しい小児がんは成人のがんと比べて情報が少なく、病院探しに苦労する保護者も多かった。拠点病院は病院選びの指標となっており、患者の受け入れや治療体制を見直して充実を図る病院は多い。
北海道大病院(札幌市)は昨秋、診療科を超えた連携が必要な分野についてワーキンググループを発足させた。医師養成のため、米国の病院で治療技術を学ぶことも始める。小松嘉人診療教授は「これまでは医師個人が中心に対応してきたが、組織的な治療やケアを目指す」と強調する。
■テレビ会議導入
九州・沖縄で唯一の拠点となった九州大病院(福岡市)。地区内には多くの離島もあり、原寿郎小児科長は「九州大病院だけですべての患者を診るのは難しい。どの県でも一定レベルの専門治療が受けられるようにしたい」と訴える。治療実績のある8県の大学病院や総合病院にテレビ会議システムを導入し、治療方針を決めるのに役立てる。画像や動画も見られ、多くの医師の意見が参考にできるという。
九州大病院は手術が難しいケースや抗がん剤が効きにくい患者の積極的な受け入れも始めたが、「人手不足に陥る懸念」(原小児科長)もあり、南九州地域や沖縄の患者は鹿児島大病院(鹿児島市)を中心に受け入れる計画も進めている。