スマホ決済、球場やカフェにも 読み取り機が進化
移動販売でも「カードで」
高額グッズ売り上げ増
横浜DeNAベイスターズの本拠地である横浜スタジアム。スタジアム内で球団グッズを販売する移動式ワゴンでは、カード決済が可能だ。以前はカード会社と通信する有線回線をワゴンに引くことが難しかったため、実現できなかった。価格が1万円を超えるものもあるユニホームやサインボールなどの購入をちゅうちょするファンもいたという。
そんなときに見つけたのが米アップルのスマホ「アイフォーン」とその無線通信機能を使って決済処理できるフライトシステムコンサルティングの「ペイメント・マイスター」だ。この仕組みでお客はワゴンでもカードが使えるようになった。「グッズ販売は球団の貴重な収入。カードを使えることで高額グッズの購入が増えているし、買い逃しも減っている」(横浜DeNAベイスターズ)という。
スマホとカード決済の相性のよさに着目し、より簡易なサービスを提供する事業者が増えている。これらはいずれも500円玉ほどの読み取り機をスマホやタブレットのイヤホンジャックに差して使う。米ペイパルの「ペイパルヒア」や楽天が提供する「楽天スマートペイ」などがある。その一つであるコイニー(東京・渋谷)の「コイニー」を導入しているのがカフェ「ファクトリー」(同)だ。
ファクトリーではコイニーとアップルの「アイパッド」を使ってテーブルでカード決済している。カフェの利用者にとっては、店員がカードをレジまで持っていき、会計をする間の待ち時間が省け、1万円以下の会計であればサインレスのためさらに早く終わることが便利という。オーナーの西原典夫さんは、「(システム利用にかかる)手数料はカード会社と契約するよりも低いので、小規模の店舗でも導入しやすい」と説明する。
スマホ活用の波は電子マネーにも及んでいる。例えばイベント会場で飲食物を買う場合。移動販売員が持つスマホに、購入客が自分のおサイフケータイ機能付きスマホや電子マネーのICカードをかざして支払いをするといった用途が想定できる。こうしたシーンを計画するのは、電子マネー決済サービスを手がけるTFペイメントサービスだ。早ければ今月中にも、おサイフケータイ機能付きスマホやタブレットを、電子マネーのいわば「読み取り機」にできるサービスの提供を始める。電子マネー決済機器が高額で、カード対応が今までできなかった商店街から引き合いが増えると同社は期待する。
ネットでも手軽に
決済の敷居が下がっているのは対面でのやりとりだけではない。インターネットでの決済も容易になっている。ウェブサイトで商品やサービスを購入する際、購入者が手軽にカードを使うのに役立つ。サイトを通じて販売する事業者や個人にとっても、購入者の利便を高めるメリットがある。
代表例がウェブペイ(東京・品川)が提供するサービスで、ウェブサイトのプログラムに数行のコードを加えるだけでカード決済機能を付けられる。開発が簡単なので、サイト運営側の費用も低く済み、導入にかかる時間も従来の2カ月程度から1日ほどに短縮できるという。
同様のサービスはベリトランスが提供しているほか、ヤフーが4日から提供を始めた。今後はインターネット上でカード決済できるサイトが大幅に増える可能性がある。
(電子報道部 松浦龍夫)
[日本経済新聞夕刊2014年4月10日付]
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