健康維持に大切な腸内細菌 抗生物質や食習慣で乱れ病気との関係、解明進む

健康の維持に大切な役割を果たしていると考えられる腸内細菌。人間の腸には約1千種類も存在し、腸内細菌のバランスの乱れとアレルギーなどの病気との関係もはっきりしてきた。一方で遺伝子解析技術の進展などから従来の善玉菌や悪玉菌といった分け方の枠に収まらない性質も見え始めている。食生活の乱れや抗生物質の使いすぎなどでバランスを乱さないことが大切だ。

「抗生物質で腸内細菌のバランスが崩れると、ぜんそくが悪化する仕組みを動物実験で明らかにできた」。筑波大学医学医療系の渋谷彰教授はこう話す。マウスに抗生物質を与えると乳酸菌などが減る一方でカビの一種であるカンジダ菌が異常に増殖。通常は無害なカンジダ菌が作り出す物質が血液を通じて大量に肺に達し、ぜんそくがひどくなった。抗生物質の種類によって異なるが、最も多い場合は2週間で腸内のカンジダ菌が通常の100万倍に増えた。

■刺激で育つ免疫力

腸は口から入る食物などを介して直接、体外に通じていて、病原菌の攻撃にもさらされやすい。「人間を病気から守る免疫細胞の7割は腸に集まっている」(渋谷教授)。腸内細菌が腸に住み着くことが刺激になって免疫力を育てるとともに、免疫の働きを助けていると考えられている。抗生物質は感染症の治療には有効だが、使いすぎると関係のない腸内細菌を殺す影響でバランスが崩れる危険もあるわけだ。

腸内細菌のバランスを崩す原因は、抗生物質の投薬など医療行為だけではない。食習慣やストレスなど生活習慣からの影響も大きい。厚生労働省の健康情報サイト「e―ヘルスネット」でもこうした影響を指摘、腸内細菌のバランスを保つことが健康に大切と訴える。腸内細菌研究の草分けとして知られる光岡知足東京大学名誉教授は、著書でビフィズス菌などの善玉菌を多く含むヨーグルトなどの乳製品や納豆などの発酵食品、また善玉菌の働きをよくすると考えられている食物繊維やオリゴ糖を多く含む食品をとることが効果的としている。

さらに「乳幼児期にどれだけ多くの細菌に接しているかも大切と分かってきた」(渋谷教授)。腸内細菌は母親の胎内にいる間は存在せず、生まれた後に口にする食べ物などを通じて体内に入り、腸に定着する。出生直後の乳児は20~30種類の腸内細菌しかないが、離乳食を食べ始める2歳頃になると急速に増えて大人に近くなり、その後は15~20歳頃までなだらかに種類が増える。急増する時期に清潔すぎる環境に置くと腸内細菌の種類が十分に増えず、大人になってからもバランスが悪いままになる危険性がある。幼児期に屋外で土を触って遊んだり、おもちゃをしゃぶったりする経験は大切だ。

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