「ぬるめの湯で足湯をすると、副交感神経の働きが高まり、リラックス効果が得られる」。帝京平成大学の上馬場和夫教授は自身の実験結果をもとにこう話す。副交感神経は体の機能を無意識に調節する自律神経の一種で、休息時などに強く働くことが知られている。特に炭酸入浴剤入りの湯を使うと、リラックス効果が高まることも分かったという。
実験では15人を対象に、炭酸泉で30分間、足を湯につけた。自律神経のうち活動するときに働く交感神経の機能が抑えられたり、副交感神経が活性化したりした。
リラックスできるだけでなく、寝付きをよくする効果を指摘するのは、4月に開設される京都看護大学の学長に就く豊田久美子氏だ。「足が温まり交感神経の働きが弱まると、胴など体幹の温度が下がり寝付きやすくなる」と解説する。
2人の専門家はいずれも就寝前に足湯をし、湯冷めしないように足をよく拭いて寝ることを勧める。「ショウブなどの薬草のエキスを湯に入れると、さらに効果が高まる」(上馬場教授)という。
さらに、免疫機能を高める可能性も示されている。豊田氏らは10人を対象に20分間足を湯につけた後、血液を調べる実験をした。この結果、免疫をつかさどるリンパ球の一種であるナチュラルキラー(NK)細胞の活性が7人で上がった。
豊田氏は「足湯で足の血管が温められて開き、血流が良くなった。さらに副交感神経の働きが高まりNK細胞が活性化したのではないか」とみている。温泉につかり体が温まると免疫機能も高まるという考え方があるが、それが足湯でもあてはまるという立場だ。
一方、藍野大学の本多容子教授らは足湯が高齢者の転倒防止に役立つことを見つけた。若い人は歩く際に、かかとを地面に付けた後に足全体を接し、最後につま先で地面を蹴る。しかし年を重ねると、関節が固くなって小股なすり足で歩くようになる。バランスを崩したときに踏ん張りが利かず転びやすくなる。
そこで、本多教授らが20人の70代女性を対象に10分間ずつ足湯をした。以前よりつま先を反らせる角度が大きくなったという。「足湯で関節や軟骨、筋肉が温まって柔軟性が増し、可動域が広がったため」とみている。バランスを崩しても踏みとどまりやすくなるという。