パリ、ただよう花
息づかいとらえる映像
邦題の「花」は、どうよむのだろう。
中国語で「ホア」とよめば、主人公の女性の名前だ。
花(ホア)(コリーヌ・ヤン)のアップではじまり、アップで終わる映画。その間、キャメラはずっと手持ちで、彼女に密着する。
花はパリにいる。北京で恋仲になったフランス人を追いかけてきたのか、その男を見つけ「最後に1回だけでいいから抱いて」とすがるが、逃げられる。
打ちのめされた花だが、その直後、ふとしたきっかけで言いよってきた工事現場の労働者マチュー(タハール・ラヒム)と食事に行き、強引にセックスされると、花も燃えてしまう。
それまで住んでいた中国人の男の部屋を出て、引っ越した部屋でマチューとはげしくもとめあう。
花は北京の大学にもどれば、それなりの職がえられる知識階級で、出世しそうな大学教員の元恋人は、まだ彼女に求婚してくる。
そんな安定から逃げるかのように、花はさまざまな男と関係をもつが、粗野なマチューとの結びつきは、ひときわつよいようだ。くりかえされるセックス描写にそのことがあらわれる。
目まぐるしいほどのスピードで結ばれ、ほどけていく花の男関係。そのスピード、というより彼女の息づかいに、ついひきこまれ、彼女のこころがどこにあるのか不安になっていく。
監督ロウ・イエ(婁●(火へんに華))は「デッド・エンド最後の恋人」(1994年)でデビュー以来、「ふたりの人魚」(2000年)、「天安門、恋人たち」(06年)等、映像のスタイルや性描写等で中国映画の枠をこえる作品をつくってきた映画作家。
ジャ・ジャンクー(賈樟柯)作品のキャメラマンとして知られる香港のユイ・リクワイ(余力為)とはじめて組んでの流動的な映像がみごと。神代辰巳監督作品のようだ、と思ったら、実際、参考にしたとか。1時間45分。
★★★
(映画評論家 宇田川 幸洋)
[日本経済新聞夕刊2013年12月27日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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