統合失調症の治療には抗精神病薬が使われる。1種類でどの患者にも効くような万能薬はなく、日本では歴史的に複数種類を処方する傾向があるという。
国立精神・神経医療研究センターの精神保健研究所が発表した研究成果によると、統合失調症で出来高払いの精神科病棟に入院している患者のうち、3種類以上の薬を処方されている割合は約4割、4種類以上は2割にのぼった。外来でも約2割が3種類以上だった。
■欧米より多め
2011年10月のレセプト(診療報酬明細書)を調べた結果で、調査の限界はあるが、全国的なデータ分析は初めて。欧米は2種類以下がほとんどで、日本の多種類は国際的に珍しいという。
薬は必ずしも1種類でないといけないわけではなく、患者によっては3種類もあり得る。
だが、「むやみに多いのはよくない。往々にして種類が多いと、大量処方につながることがある。種類や総量が増えると、副作用のリスクが高まる恐れがある」と同研究所の山之内芳雄・社会福祉研究室長は指摘する。
副作用には、のどの乾きや、便秘、心臓への負担の増加、ぼんやりする傾向、前のめりになったり手が震えたりする運動の異常、うまく飲み込めないといった症状があるとされる。
また、それぞれの薬の量が少ない場合でも、作用の仕組みが異なるものを根拠なしに混ぜることになって、効き目がわかりにくくなる恐れもあるという。
同じ調査の別途分析した結果では、医療費が定額の包括払い方式の病棟の場合は3種類以上が約25%と出来高払いより低かった。「包括払い方式では診療報酬上のインセンティブ(2種類以下の処方に対する加算)が働いて、薬を減らしている可能性がある」と同研究所の伊藤弘人・社会精神保健研究部長は推測している。
1種類の処方の割合も年々増えてはいるが、国際共同処方調査によると、日本は欧米や東アジアの平均よりも低い。3種類以上だと効果が上がるというはっきりした科学的根拠もないという。
投薬の減量は重要だが、やみくもに減らせばいいわけではない。「すでに処方している薬の総量や種類を急に減らすと良くない場合があり、ゆっくりと減らす方法が必要」(山之内室長)。そのためのガイドラインを今回、日本で初めて作成した。