抽出時の湯量がカギ 薫り高いコーヒー、自宅でも
「同じコーヒー豆なのに、湯の注ぎ方でここまで味が変わるなんて」と目を丸くするのは会社員の栗原彩香さん(34)。会社帰り、タリーズコーヒー東京駅八重洲地下街店が開くコーヒースクールに参加した。1日5杯飲むが、粉をフィルターでろ過して入れるペーパードリップは初体験だ。
タリーズコーヒージャパン(東京都新宿区)は全国の店舗でコーヒーについて学べる講座を開く。豆の知識、基本的な入れ方、エスプレッソマシンの使い方など3つのコースがあり、2時間2000円で学べる。
講座を担当するチーフコーヒーアドバイザーの田代洋介さんは「初心者におすすめなのはペーパードリップ。入れ方の基本を押さえれば、自宅でも香り豊かな1杯ができます」と話す。図に必要な道具をまとめた。初期投資も少ないので、気軽に始められる。
ペーパードリップで入れる際、大きなポイントになるのは抽出のときに注ぐ湯の量だ。湯量は細く一定にしたいので、注ぎ口が細いポットを用意するとよい。
抽出時はフィルターの中心にドーム状の泡を作るように円を描きながら入れる。フィルターには湯をかけない。湯がコーヒー粉を通らず直接サーバーに落ちて、味にムラができるからだ。
注ぐときの湯量について、プロ向けのコーヒー教室カフェズ・キッチン(東京都目黒区)を主催する富田佐奈栄さんは「湯が粉に当たって泡立つ際、ピチャピチャ音がしたら湯の線が細すぎる。徐々に湯量を増やし、音がなくなったときが適度な太さ」と助言する。
サーバーに必要量のコーヒーがたまったら、すぐにドリッパーを外す。コーヒーの抽出は最後に雑味やえぐみが出る。フィルターの湯を出し切るのは間違いだ。
時間の目安はコーヒーの量に関係なく3~4分程度。焦りは禁物だ。作る間に広がるコーヒーのアロマを楽しみたい。
新しくコーヒー粉を買うときは、店員に味の好みを伝えよう。「酸味の強いもの」「あっさりしたもの」「深く苦みを感じるもの」などと伝えて相談すればいい。
コーヒー豆は湿気や熱に弱いので、密封容器に入れて冷蔵庫に保存する。「コーヒー豆は1カ月、ひいた粉は2週間で使い切りたい」とキーコーヒーの経営企画部、磯田義尊さんは勧める。
酸味・渋み 自分好みに
ペーパードリップで安定した味を出せるようになったら、抽出スピードを変えたり、湯の温度を変えたりして自分好みの入れ方を身に付けよう。
例えばコーヒーの酸味を強調したいときは、粉の量を減らす以外に、抽出のスピードを少し速くすると、えぐみや渋みが出にくくなる。湯の温度が高いと抽出スピードが速くなるので、早めに切り上げないとえぐみが出過ぎてしまう。
抽出スピード、湯の温度、粉の量以外に豆の焙煎(ばいせん)度や粒の大きさでも味は変わる。「経験を積むことで、気分に合わせた1杯を入れられる」(富田さん)
組み合わせるスイーツにもこだわりたい。酸味の強いコーヒーのときは、ベリーパイやリンゴタルトなど果物を使ったスイーツを選ぼう。
一方、チョコレートケーキやベークドチーズケーキ、モンブランなど味がしっかりしたスイーツにぴったりなのは、苦みがあって深みのあるコーヒー。コーヒーとスイーツは「同質の味を組み合わせることで、お互いの良さを引き出す効果がある」と磯田さんは指摘する。
(坂下曜子)
[日経プラスワン2013年11月23日付]
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