英語対応や自動決済も タクシー予約アプリ多彩に
岐阜交通(岐阜市)は9月、日交データサービス(東京・北)が手掛けるアプリ「全国タクシー配車」を導入した。利用者は無料のアプリをダウンロードし、名前や台数、予約時間などを入力する。自分が今いる地点はスマホ搭載の全地球測位システム(GPS)が瞬時に計測するため、詳細な住所を打ち込む必要はない。移動先までの費用の見積もりを出したり、空港に行く際に定額料金で予約できたりする。
45都道府県で連携
地方都市では走行しながら顧客を探す「流し営業」は少なく、電話予約が多い。ただ「電話では顧客の位置を正確に把握するのに時間がかかる」(岐阜交通)のが悩み。スマホのGPS機能を使えば、顧客とやりとりする時間を大幅に短縮できる。同社はスマホに慣れた30~40代の利用を見込む。
「全国タクシー配車」の予約サービスは2011年に始まった。島根県と大分県を除く45都道府県のタクシー会社と連携しており、岐阜交通もその1社。今では法人タクシーの1割に当たる約2万台を予約できる。
同アプリは土地勘のない場所へ観光旅行したり、出張したりする機会に特に便利だ。慣れない地方都市では自分がいる位置を説明しにくいほか、顧客を探して走行するタクシーを見つけるのが困難なためだ。
予約にかかる料金は地域によって異なる。電話予約の場合、東京では300~400円程度かかることが多いが、別の地域では無料のところもある。スマホ予約でもこうした地域の商習慣を踏襲していることが多い。
最近では外資系企業も参入した。ヘイロー・ネットワーク・ジャパン(東京・港)は9月、大阪でスマホ予約サービスを始めた。年内に東京でもサービスを始める方針だ。
外資参入、五輪も商機
同社は英ヘイロー・ネットワークの日本法人。ニューヨークやロンドンなど世界10都市以上で同様のビジネスを手掛けているのが強みだ。
アプリは世界共通で英語やスペイン語にも対応する。20年の五輪開催地が東京に決まり「外国人観光客の増加が見込める日本で、世界的に浸透しつつあるスマホ予約サービスの需要が増える」(同社)とみている。日本人が海外旅行先でタクシーを利用する際、日本語で予約できることも特徴だ。
スマホ予約が広がってきたことで、予約以外のサービスをアプリに追加するタクシー会社も出てきた。日本交通は昨年12月、スマホでの予約者を対象に自動決済サービスを始めた。アプリにカード情報や本人確認番号を登録しておけば、予約時に自動決済を選ぶと、降車時の支払いの手間を省ける。
東京無線協同組合(東京・新宿)は今年8月、電車の乗り換え案内サービスを手掛けるナビタイムジャパン(東京・港)と提携した。電車での乗り換え案内を検索する際の移動手段にタクシーを追加。検索結果画面に表示される「タクシーを呼ぶ」を選ぶと、同組合のスマホ予約用アプリが起動する。取引先回りで忙しいビジネスマンなどの利用を想定している。
アプリ利用が便利になる一方で、電話の方が顧客の要求にきめ細かく対応できる面もある。例えば高齢者が車いすのままタクシーに乗り込む場合には大型車が必要になる。利用者は電話で事情を説明してから予約した方が誤解がなさそうだ。
(経済部 中村亮)
[日本経済新聞夕刊2013年10月31日付]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。