温泉+散歩で病気予防 広がるヘルスツーリズム

日本に古くから伝わる「湯治」が、現代の生活様式にマッチした「ヘルスツーリズム」としてよみがえろうとしている。ドイツを手本に、温泉やウオーキングで疾病の緩和や予防につなげる健康保養地作りに取り組んだり、温泉に滞在して療養する人の費用を補助する自治体もある。宿泊や飲食など地域の活性化への効果を期待する声がある一方で、定着には医療と観光の連携など課題もある。
ドイツ流の気候性地形療法では、チェックポイントで脈拍を測りながらウオーキングする(山形県上山市)

開湯555年の歴史を持つ上山温泉(山形県上山市)から標高約1000メートルまで上がった蔵王高原坊平。9月初旬の午前9時30分、帽子にリュック姿のウオーキングの一団が出発した。専門のガイドが先導。高低差190メートルとアップダウンのあるコースの所々で、心拍数を測りながら無理なく自分のペースで歩く。ガイドは参加者の体調を気遣いつつ周りの草花や昆虫を説明。四季の変化が感じられるのも楽しみの一つだ。

■「体脂肪率が低下」

単にウオーキングというだけではなく、ドイツでは医療として認められた「気候性地形療法」と呼ばれる自然療法だ。汗はかくが、ひんやりした空気が肌に心地よい。4月から週2回、参加する地元の女性(54)は「体脂肪率が下がった」と喜んだ。運動の後は、温泉。疲れた体をお湯で温めて血行を改善し、再びウオーキングと繰り返し健康を増進していく。

温泉は疲れた体を温めて血行を改善する(山形県上山市)

ドイツでは気候性地形療法や温泉療法など向けの保養地を「クアオルト」といい、上山市が目指すのはその日本版。温泉地の伝統である湯治の復活でもある。独ミュンヘン大学から同療法のウオーキングコースの認定を受けたのは、2008年。以来、コースの増設やガイドの育成、共同浴場や旅館との連携を進めてきた。今では毎日、有料のガイド付きウオーキングなどを開催。参加者は4月以降、前年比2倍に増え、「企業の関心も高く、本物志向のクアオルトを目指す」(横戸長兵衛市長)。

同市ではドイツの医学的知見だけでなく、東京医科大学や早稲田大学など国内の専門家と連携。中性脂肪の低下や心肺機能の向上など「クアオルト効果」を独自に検証している。アドバイザーを務める医療法人長清会の長岡迪生理事長は「今後は地元の医療機関との連携も必要」とみる。

脳卒中などのリハビリテーションとして温泉療法を提供してきた経験を生かし、栃木県医師会塩原温泉病院(栃木県那須塩原市)は08年、地元の観光協会などが企画した温泉と散歩などを組み合わせた健康増進ツアーを指導した。参加者約30人にウオーキングや温泉プールでの水中運動などを体験してもらい、血圧やコレステロールなどが下がる効果を確認。例えば、高血圧だった人は9割が、コレステロールが高かった人は半数で値が下がった。

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