パンツスタイルの原形はフランスで60年代に登場し「70年代、米国のウーマンリブ(女性解放)運動が普及のきっかけです」。90年代に米国で流行し、日本にも伝わってきたそうだ。男性に引けを取りたくない、なじみたい、しかもきちんとした格好をしたい。そんな意識がパンツスタイルを選ばせるという。

スカートとパンツを同時に購入する女性もいる(東京都中央区の松屋銀座本店の「ポール・スチュアート」)

「でもスカートは絶滅しませんよ」。パーソナルスタイリストの久野梨沙さん(35)が説明してくれた。「女性を強調した方が仕事上有利に働くと判断すればスカートをはきます」。象徴的な例は就職活動中の学生、経営者や管理職クラスという。面接や会議などで「彼女たちが対峙するのは役員級の男性。彼らが『働く女性』を連想するのはスカートスタイル。その期待を外すことなく、女性というブランドを使いこなします」。

女性管理職などに支持される高級服飾雑貨ブランド「ポール・スチュアート」を担当する三陽商会の吉田修さん(48)に尋ねると「オーダースーツでパンツとスカートを一度に作る方も多いです」と話す。高島屋日本橋店(東京都中央区)で婦人服売り場を担当する水原利枝さん(43)は「女性管理職は普段は動きやすく縦長のシルエットを強調できるパンツを、会食など改まった場面では女性らしさを出せるスカートを、と使い分けているようです」という。

消費社会論を研究する学習院大学の眞嶋史叙教授(38)に働く女性の意識の変化を尋ねると「日本の会社はまだ、職位が上になるほど女性は珍しい存在です。だから男性目線だけを考慮すればよかったのです。経営者や役員に女性が増えれば、女性目線も意識するようになり、女性たちの服装戦略も今より自由になるでしょう」と指摘する。

週末、明日香は百貨店でタイトスカートを買った。週明けの事務所で後輩の松田章司が「あれ、スカートなんて、合コンですか?」と一言。「今日の依頼人は会社役員だから気合が違うのよ。そんな見方じゃいつまでもヒラ探偵よ」

(古屋智子)

[日経プラスワン2013年6月15日付]