充実したシングルライフ過ごすための「8訓」
シングル男女が増えている。自由気ままに思える独身生活者も心のうちには将来への不安を抱えている。充実したシングルライフはどうすれば送れるのか。専門家に聞くと、稼ぐ力と健康、頼れる人付き合いの3つが基本だという。
稼ぐ力つけ友人大切に
5月下旬の金曜日の夜9時すぎ。ANAインターコンチネンタルホテル東京(東京都港区)のバー「シャンパン・バー」はジャズの生演奏を聴きながら、シャンパンを楽しむ女性客で満席になっていた。女性限定で3500円から4750円で、お酒を好きなだけ飲むことができる。
30代独身の会社員、佐藤千花さんは友達とよく訪れる。暮らしていける収入があり、時間も自由。「友達とこうやって過ごせる独身生活はすごく楽しい」。ただ、同居している親が年を取ってきたのが気がかり。今、彼氏はいないが「いつかは結婚できたらいいな」という期待もある。
比較的束縛が少なく、自由なシングル男女。ただ結婚に興味がないわけでもない。国立社会保障・人口問題研究所が2010年に調査した出生動向基本調査によると、いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、男性86.3%、女性89.4%と高い水準にある。
出会いに備えてダイエットに励み、エステなどに通って「女子力」を磨こうと考える女性は多い。だがファイナンシャルプランナーの竹下さくらさんは「女子力アップより稼ぐ力アップが優先」と助言する。
同じ調査で、結婚後パートナーに専業主婦を望む男性は1割程度にとどまる。妻に仕事と家庭の両立を希望するケースが増えており、稼げる女性の人気は高い。もし万一、出会いに恵まれなかったとしても経済的に自立して生活できる利点もある。
語学力を磨いたり資格を取ったりして今の仕事のキャリアアップを目指すのが基本。趣味があるならとことん極めてみる手もある。生け花や着付けで師範になるなど意外な収入源が見つかる可能性もある。
人との付き合いは煩わしい面もあるが、心の支えにもなる。女性の心理に詳しいコラムニスト、ジェーン・スーさんは「一生付き合いたい友達をつくること」と強調する。病気で寝込んだときなど、独りぼっちではどうにもならない局面もある。急病で入院したときなどに着替えの準備などを頼めるのはやはり友達だ。いざというときに頼れる存在があると心強い。
人生は家族や恋人だけと歩むものでなく、職場の仲間や共通の趣味の友人など偶然出会う人々との心の交流で充実度が変わってくる。そんな友達や人と出会うコツは「愛されるより、愛すべし」(スーさん)。自分から心を開き、道を切り開く積極性を鍛えたい。
将来を具体的に想像
経済的な蓄えも欠かせない。失業や病気など予期せぬ事態に備えるなら「生活費の3カ月から半年分の貯蓄が目安」(竹下さん)。例えば病気。平均入院日数は約33日なので3カ月分以上の蓄えがあれば心強い。頼る人が限られるシングルは健康管理が大切だ。会社や自治体の健康診断を受けたり、規則正しい生活を送ったりして早めの対処と予防を心がけよう。
住まいも悩みどころだ。賃貸は頭金などまとまった支出が若いころにいらない半面、老後も支払いが続く。持ち家は長期でローンを組むため目先の経済的負担が増すが、精神的な支柱になる利点もある。メリット、デメリットを考慮して判断する。いずれ結婚したり、実家に戻ったりする可能性もシングルはある。将来のライフスタイルの変化に対応するには、駅に近いなど売ったり貸したりしやすい物件を選ぶとよい。
女性の生き方について著作が多い日本大学芸術学部の佐藤綾子教授は「人生の台本は自分で決めるもの」と話す。5年後、10年後にどうしていたいのか。自分の理想の幸せの形を、できるだけ具体的にイメージをすることから始めよう。
(佐々木たくみ)
[日経プラスワン2013年6月8日付]
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