鬼から電話「こら!」 子供のしつけ手助けアプリ
仕事や家事に追われるなか、幼い子供を育てる親にとって言うことを聞かない子供をしつけるのは一苦労。そんな親たちを手助けするアプリが人気だ。困ったときにさっと取り出せるスマートフォン(スマホ)やタブレット(多機能携帯端末)の手軽さもあり、日々の負担を軽くしてくれる心強い味方になっている。
「夜遅くまで遊んでいて寝付かないときに見せると効果てきめん」と話すのは千葉県柏市に住む佐々木隆行さん(34)。次女のあいりちゃん(3)が言うことを聞かないときに利用するアプリが「鬼から電話」だ。
怖い声で「こら!…」
スマホでアプリを起動し、「歯磨きをしない時」「片付けをしない時」といったいくつかのシチュエーションを選ぶ。すると赤鬼やお化けから着信があり、鬼の顔などが画面に表示される。
幅広い状況で使えそうな「言うこときかない時」を選ぶと「もしもし赤鬼です」と怖い声が。「また言うこと聞かないんですか」などと続き、ため息をつかれ、舌打ちまでされる。「困りましたねぇ」「電話代わってもらっていいですか?」と次第に声のトーンが上がるにつれ、後ろを向いていた赤鬼がだんだんと前を向いて表情が見え始め、最後は「こら! 言うこと聞かないと、鍋に入れて食べちゃうぞ」と脅してくる。
途中で子供が泣き出したり、「ごめんなさい。言うこと聞きます」などと言ったりしたら、「通話を終了」を押して中止する。
対象年齢は2~6歳だが、物心がつき始める2~3歳が効果が出やすいという。実際、佐々木さん宅でも3歳のあいりちゃんは「本物の鬼から電話がかかってきたと思っている」。長女のひよりちゃん(6)は慣れもあるせいか、最近はあまり怖がらなくなったという。
開発したのはウェブ制作などを手がけるメディアアクティブ(東京・大田)。秋田県出身の佐々木孝樹社長が幼い頃に両親から「悪いことをするとなまはげが来るぞ」と言われて育ったことにヒントを得た。
昨秋から提供を始め、ダウンロード数は今年5月初めに260万回を突破した。基本となる8つのシチュエーションを選んだ場合は無料。利用客からのリクエストを受け、「公共の場でさわぐ」や「お手伝いしてくれた時」に鬼がほめてくれるパターンも加えた。4月には韓国版も投入している。
絵本の読み聞かせも
「忙しくて絵本の読み聞かせができない」「毎日読むのは疲れる」といった親に心強いアプリが「森のえほん館」だ。昔話やテレビアニメなどの作品を選ぶと、劇団員がふき込んだナレーションが始まる。料金は定額で1カ月350円など。200冊以上ある絵本が読み放題で、来年3月までに300冊に増やす。1度ダウンロードすると端末に保存されるため、2回目以降は電波がつながらない場所でも再生できる。
スマホやタブレットの特性を生かし、キャラクターに触れると動くといったアプリは多いが、森のえほん館が想定するのは寝る前の読み聞かせ。開発したキッズスター(東京・港)の平田全広取締役は「タッチすると興奮して寝付けなくなるため、あえてシンプルにした」と説明する。対象は0~6歳児。年齢別やカテゴリー別に作品を選べる。
便利な子育て支援アプリだが、頼りすぎるのは禁物。「鬼から電話」を開発したメディアアクティブの佐々木社長は「子供を習慣づけさせるのが目的で、しかれない親の代わりをするアプリではない」と話す。使う頻度はほどほどに、賢く楽しく活用したい。
(消費産業部 小泉裕之)
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