高度技術導入も

今後、チームの存在意義がさらに高まるのは、血液の逆流を防ぐ弁が閉じなかったりする大動脈弁狭窄(きょうさく)症などの治療分野だ。胸を開かず、カテーテルで人工弁を入れる「弁置換術(TAVI)」という高度医療が新たに登場。体への負担が少ないことなどから、投薬治療に頼っていた内科医の関心も高い。承認されれば、手術をあきらめていた高齢者にも治療の手が差し伸べられ、外科、内科の連携が一段と強まるとみられる。

心臓疾患の場合、救急以外は、最初から外科にかかる患者はほとんどおらず、内科が窓口になるケースが多い。沢教授は「内科は大半の患者さんが最初に訪れる、いわばゲートキーパー。外科も連携すれば、適切な治療法の選択にもつながる」と指摘する。

全国規模で外科と内科の連携を進める動きも出てきた。

榊原記念病院(東京・府中)の高梨秀一郎副院長(心臓血管外科)らが中心となり、勉強会を立ち上げた。昨年12月の参加者は内科医130人や外科医20人のほか、検査技師や看護師。内科医は心臓の手術をブタで体験、外科医は、3次元超音波での画像診断などの手法を学んだ。外科、内科のそれぞれの先進的な治療や知識を得られる貴重な場となっているようだ。

厚生労働省によると、国内では2011年、心筋梗塞などの心疾患が原因で死亡した患者は前年に比べ、2.9%増の約19万4000人に上った。日本人の死因トップのがんに続き、心疾患は2位。高齢化が進んだことが要因とみられ、増加に歯止めをかけるには、心臓疾患の治療現場の努力が重要となる。「ハートチーム」の存在は、こうした問題の解決の糸口となりそうだ。

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がんが先駆け、脳梗塞でも

病院内の組織の垣根を越え、治療しようという試みは、がん治療が先駆けといわれる。最近では心疾患だけではなく、脳梗塞など他の分野でも連携の兆しがある。

がん研有明病院(東京・江東)には、内科と外科などが一緒にがん治療に取り組む「キャンサーボード」がある。胃がんや大腸がん、肺がんなど疾患別に対応。例えば、消化器のがんに関しては、外科、内視鏡、投薬など複数の治療法があり、医師が患者に説明した上で、選択する。

一刻を争う治療が求められる脳梗塞の現場でも、内科と外科の連携が進んでいる。国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)では発症直後の脳梗塞患者に対し、必ず内科と外科が合同で実施する治療がある。カテーテルを使い、血栓をからめ取る血管内治療のケースだ。通常、血栓を溶かす血栓溶解剤「tPA」の投与を検討するが、合併症の危険性などがあれば、速やかに血管内治療に移る必要がある。連携で病状に応じた治療法の選択や組み合わせが広がるという。

大学や研修医時代には内科系も外科系も学ぶ。その後、専門科に進めば、専門以外は日進月歩の医療技術や新薬などに知識が追いついていかないのが現状だ。

今後、再生医療が進展していけば、これまで薬で現状を維持するしかなかったような糖尿病においても、外科治療が可能になるかもしれない。患者本位の医療には、あらゆる病気での連携が欠かせない。

(吉野真由美、今井孝芳)

[日本経済新聞夕刊2013年4月18日付]