今年1月、国内ではじめて重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスの感染者が報告された。
3月13日までに確認された8人の患者のうち5人が死亡している。このウイルスを持つマダニにかまれることで感染する病気だ。中国ではこのウイルスに感染した動物が確認されていて、人獣共通感染症(ズーノーシス)の可能性が高い。
ズーノーシスとは「脊椎動物と人との間で自然に行き来する病気や感染」のこと。狂犬病や猫にひっかかれて感染する猫ひっかき病など様々な病気がある。
東京大学大学院農学生命科学研究科の山田章雄教授は「人に感染する病原体の6割はズーノーシスで、決して珍しい病気ではない。ただ正しく動物と接して日常生活で注意すれば、その多くは防げる」と話す。
ズーノーシスは動物に直接触れたりかまれたりして感染すると考えがちだが、そればかりではない。感染した動物のふん尿を介したり、感染動物の血を吸ったダニやノミ、カなどを介して起こることも多い。例えば紅斑や疲労などを引き起こすライム病や、発熱や発疹を起こす日本紅斑熱などはダニにかまれてうつる。
予防には生活の場面ごとに注意が必要だ。まず気をつけたいのがペットとの付き合い方。「ペットをかわいがるあまり同じ食器で食事をとったり、寝室に入れたりする人もいるが、それは危険」と日本大学医学部の荒島康友助教は警告する。動物の唾液には様々な細菌がいる。睡眠中気づかない間になめられたり、食器についた動物の唾液が人の口に入ったりして、感染する可能性がある。
荒島助教の調査では、皮膚の化膿(かのう)や気管支炎などを引き起こすパスツレラ症の原因菌を、猫のほぼ100%、犬の75%が保有していた。重症になると敗血症を引き起こすカプノサイトファーガ感染症の原因菌も、犬の70%以上が保有していたという。
「動物に触ったあとはしっかり手を洗うことが肝心。行楽地の牧場や動物とのふれあいコーナーだけでなく、自分のペットに触ったときも同様」と山田教授。
ふんの処理も重要。ペットの散歩でふんを取るときは必ずビニール袋などを使用する。紙だけでは手指が汚染される可能性がある。