ビデオ・チャット・省電力…無料通話アプリ、個性競う
スマートフォン(スマホ)でつい長電話をして、届いた請求書を見て後悔した経験のある人は多いはず。そんな人は無料通話アプリを試してみるのも一案だ。通話する者同士が同じアプリをインストールすれば、契約済みのインターネット回線を使って新たな通信料なしで電話できる。スマホの急速な普及に伴い、様々な特長を持つ無料通話アプリが登場している。
一般的な無料通話アプリはスマホなどの端末にインストールした後、電話番号などの個人情報を登録してアカウントを作成。アカウントを持つ友人や家族を同じように登録すれば、アプリ内に独自の「電話帳」が作成されて通話が可能になる仕組みだ。
海外への連絡も安心
「安心して長電話できる」。都内の大学に通う川内浩太さん(仮名、22)は無料通話アプリ「スカイプ」を使って米国の大学に留学中の友人と連絡を取り合う。
電話料金を気にしてためらいがちな国際電話だが、ネット環境さえあれば相手がどこで暮らしていてもお金をかけずに連絡がとれる。日本では東日本大震災後、災害時の連絡手段としても関心が高まっている。
もともと欧州の技術者がパソコン向けに開発したスカイプは、端末の内蔵カメラなどを利用したビデオ通話機能を持つ。「相手の顔を見ながら通話できるため、電話というより面と向かって会話している感覚が強い」(川内さん)。現在は一部のテレビやゲーム機にも対応し、生活習慣に合わせて通話手段を選べるようになった。
ただ、スマホで利用する場合、バッテリーの残量を気にする必要がある。会話する者同士がアプリを起動したままにしなければならず、残量不足になる恐れがある。この点、起動しなくても電話が受けられる無料通話アプリも多い。
「Viber(バイバー)」は電話があるとサーバーから通知が来るため、アプリを立ち上げて通話を始められる。会社員の北野亮介さん(仮名、23)は「営業で飛び回っている間も連絡を受けられ、使い勝手は一般の電話とほとんど変わらない」と評価する。
通話だけでなく、複数の利用者がメールのように文章を交換できるチャット機能も無料通話アプリの特長だ。NHNジャパンが運営する「LINE(ライン)」は最近ではスタンプと呼ぶ大型の絵文字が人気を呼び、1月には提供開始からわずか1年半あまりでユーザー数が1億人を突破した。
都内の大学に通う高橋奈都子さん(仮名、21)は友人と遊びに行く際、「連絡手段としてLINEを使うことが多い」。たとえば待ち合わせの駅に向かう電車では、チャット機能を使ってランチや買い物をする場所など当日の予定を話し合い、駅に着くと電話機能を使って具体的な場所を決めて落ち合うといった具合だ。
チャット機能は最大100人まで同時参加が可能。アドレスを一件一件選択しなければならない通常のメール機能と比べ手間が省け、大学のサークルや部活動で利用する学生も多い。
5人同時に会話
このほか、最大5人まで同時に話せる「グループ通話」機能を持つ「カカオトーク」など、複数での無料通話にこだわったアプリもある。
無料通話アプリの交流サイト(SNS)の側面には留意したい。
多くのアプリはユーザーの許諾を得たうえで、アドレス帳の電話番号やメールアドレスを収集、知り合いの検索に使う。名刺交換後に電話番号をスマホに登録した取引先など、特に親しい間柄でなくとも同じアプリをダウンロードしていると自動的に「友達」として紹介され登録を勧められる場合がある。設定を変えれば、こうした紹介機能を制御できるアプリもあるので活用したい。
「友人や家族など、顔がわかる相手に限定して登録している」。高橋さんはそう話す。便利さは、時に危険と背中合わせということもある。従来の電話との違いをよく理解したうえで、利用する必要がある。
(証券部 鈴木亘)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。