たばこを吸う家族がいると、住宅内のPM2.5濃度は大きく上昇する。大阪市立環境科学研究所の調査によると、誰もたばこを吸わない家庭は同20マイクログラム程度だったのに対し、喫煙者のいる家庭では同50マイクログラム前後に達した。

会社や学校に行く家族は半日、他は1日中家庭で過ごす。たばこを吸わない家族も環境基準値を上回る濃度のPM2.5にさらされる。小さな子どもや肺に病気を持つ人はPM2.5の影響を受けやすいとされる。大和教授は「こうした人たちがいる家庭は禁煙にすべきだ」と訴える。

■空気清浄機も限界

空気清浄機を使っても、たばこのPM2.5を取り除くのは難しい。ベランダなどでたばこを吸う「ホタル族」は少なくないが、PM2.5はサッシの隙間から入り込むほか、呼気に含まれたり、衣服に付着したりするため、室内に持ち込んでしまうという。

問題は大気中に漂うPM2.5よりもたばこの煙の方が有害性が高いことだ。煙の中には70種類近い発がん性物質が含まれている。「様々な調査から、受動喫煙による死亡リスクはPM2.5の値よりもはるかに高い。怖がるのなら、明らかにたばこの方だ」と大和教授は強調する。

完全分煙にするか、室内を全面禁煙にしないと、効果は薄い。国立がん研究センターの推定では、受動喫煙で死亡する人は年間6800人に達する。英国やイタリアなど受動喫煙防止法を導入した国では、心筋梗塞などのリスクが減ったとの報告がある。越境汚染だけでなく、身近にリスクが存在することも認識する必要がありそうだ。

(浅沼直樹)

ひとくちガイド
《ホームページ》
◆たばこの煙とPM2.5について知るには
 「PM2.5問題に関する日本禁煙学会の見解と提言」http://www.nosmoke55.jp/action/1302pm25.html
◆たばこの健康影響を知るには
 厚生労働省「たばこと健康に関する情報ページ」http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/tobacco/index.html

[日本経済新聞朝刊2013年3月10日付]

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