ドラゴンゲート
荒唐無稽な一大活劇
香港製カンフー映画の最高峰である『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズに熱狂したのをついこの間のことのように憶(おぼ)えているが、そのツイ・ハーク監督、ジェット・リー主演という黄金のコンビが14年ぶりに復活した! 正月早々、こんなにめでたい事件はない。
ともかく波瀾(はらん)万丈、荒唐無稽の大スペクタクルなのである。いや、ケレンたっぷり、何でもありのえげつない見世物というべきか。今回はそれに3Dという特大のオマケまで付いたが、スコセッシやティム・バートン監督のような芸術性は皆無。ただただ剣と手裏剣と人がビュンビュン飛び交って観客の度肝を抜く。
時は明朝の中国。皇帝の子を身ごもった官女が逃げだし、冷酷非情な宦官(かんがん)(東山紀之みたいな美形!)が大軍団とともにそれを追うが、孤高の義士(ジェット・リー)と艶麗な女侠客(きょうかく)が立ちふさがる。まもなく戦いは辺境の砂漠の宿「竜門」に移り、さらに遊牧民の王女が率いる盗賊団、凄腕(すごうで)の女剣士まで加わって、財宝探しの争奪戦へ。しかも、そこには60年に一度の大竜巻が迫っていた……。
「竜門」といえば、中国武術映画の神様、キン・フー監督の傑作『残酷ドラゴン!血闘竜門の宿』の舞台であり、ツイ・ハークはそのリメイク『ドラゴン・イン』を作っているから、本作への気の入れこみようは本物なのである。
冒頭と結末で呼応しあう巨大なスケールの移動撮影、垂直的な空間を活用するアクションの面白さ、戦う美女たちの魅力!
だが、残念な点が二つ。ジェット・リーの最高に優雅で鋭利な肉体の動きが見られないことと、ワイヤーワークとCGを使いすぎて真のスリルを減殺していることである。でも見ている間はハラハラドキドキ、久々の香港アクションの大盤振舞いを堪能した。2時間1分。
★★★
(映画評論家 中条 省平)
[日本経済新聞夕刊2013年1月4日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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