親子で楽しむタブレット アプリ充実、塗り絵・絵本・地図…
創造性や言葉はぐくむ
タブレット(多機能携帯端末)を使って親子で楽しめるアプリが充実してきた。画面を触って塗り絵をしたり、自分で声をふき込んで音声付きの絵本を作ったり、スマートフォン(高機能携帯電話)に比べて画面の大きいタブレットならではの楽しみが広がっている。上手に活用すれば、新しい学びの入り口にもなりそうだ。
「ママ、パパも鳴き声入れてよう」。東京・杉並に住む伊沢杏珠ちゃん(3)が両親と遊んでいるのは、ベネッセコーポレーションが開発したiPad(アイパッド)向け塗り絵アプリ「空想どうぶつえん」だ。
好きな動物の形を選び、色を塗った後、動物の鳴き声をまねしてマイクで録音。再生して楽しめる。端末を傾けるとボタンや花などの飾りが表示され、塗り絵に貼り付けることができるほか、完成した動物が動き回るしかけもある。住んでいる場所を国旗から選んで作品を投稿し、世界中のほかのユーザーの作品を見ることもできる。
伊沢さんの端末画面には様々な子ども向けアプリが並ぶが、「空想どうぶつえん」はお気に入りのひとつ。母親の歩さん(30)は「紙の塗り絵では使わない色も塗れて楽しい」と笑う。
巨匠の筆遣いも鮮明
歩さんが子育てにiPadを活用するのは、家族で一緒に楽しめることに加え、外出先におもちゃを持ち運ぶ煩わしさやパズルのピースをなくす心配がないからという。
世界の巨匠の絵画を堪能できるのは、小学館の「名画絵本ぴくぴくピクニック」だ。題材はモネやルノワールの代表作品。ゴッホのひまわりはどのような状況で描かれたかなど知識を得られるほか、絵をもとにしたパズルや塗り絵もある。画面を触れば画家が描いた絵の大きさまで拡大でき、作品の細かい筆遣いまで鑑賞できる。
日本の昔話や世界の童話のイラストを触ると動いたり音が出たりする絵本アプリ「おやこでスマほん」も人気だ。スマホでも楽しめるが、開発したスマートエデュケーション(東京・品川)によれば、ダウンロードはタブレットが4割を占める。
同社が力を入れたのは効果音の音源。自社で楽器を購入し、録音している。「感受性の高い子ども向けだから音の質にこだわった。デジタル絵本で親子の新しいコミュニケーションを生み出したい」(池谷大吾社長)
紙芝居のようにナレーションを入れられるのがアイフリーク(福岡市)のアプリ「こえほん」。250種類以上の絵本から選べ、家族だけのオリジナル絵本を作ることができる。
使いすぎには注意
こうしたアプリは今後、一段と増えそうだ。イタリアで開催される絵本作家の登竜門「ボローニャ国際絵本原画展」では今年初めて、アプリの開発者向けの賞が設けられた。
海外にも優れたアプリは多い。「Timbuktu」(英語版のみ)は毎日違った物語や知育ゲームなどが配信される。外国語の習得などにも役立ちそうだ。
心配なのが、デジタル機器の子どもへの影響。幼児向けの教育工学が専門の東京大学大学院情報学環の佐藤朝美特任助教は「幼児の脳など医学的な研究はこれから。ただ、親と一緒に指で触ったり、自分の声をふき込んだりと能動的に何かを作り上げる作業は子どもの創造性や語彙の発達、親子の関係性にも良い影響を与える」と話す。
もっとも、タブレットに子守をさせてはいけないのは言うまでもない。iPadなどでは特定のアプリだけ起動するように設定できる。また、長時間見続けると目には負担がかかる。使いすぎに気をつけながら楽しもう。
(電子報道部 杉原梓)
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