スマホの日本語入力、脱「イライラ」術 手書きも登場
ボタンを押すだけでなく、指を画面に付けたまま滑らせたり、2つの指を押し広げたり、つまんだりと、操作の仕方の幅が広いスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)。それに伴い、文字入力の仕方も多様化しており、様々なソフトが登場している。スマホの日本語入力に手間取っている人は現在の方法を見直してみてはどうだろうか。
都内在住の会社員、松戸奈津実さん(28、仮名)は昨夏、スマホに買い替えた当初、入力のしづらさに後悔した。従来の携帯電話でもよく使われる、「あ」を5回押すと「お」が表示されるケータイ打ちの場合、スマホだとボタンを打った感覚が乏しく間違えやすい。かといって画面上に表示されるパソコンのようなキーボードを使った入力では片手操作は難しい。
友人が教えてくれたのが、画面上のキーを押した指を上下左右のいずれかに滑らせて入力する「フリック入力」。ケータイ打ちと似た操作で約1週間で慣れた。「今考えると、ケータイ打ちはまどろっこしい」。スマホでの入力は携帯電話よりはるかに速くなったという。
スマホの入力方法は、松戸さんが試した(1)ケータイ打ち、(2)キーボード入力、(3)フリック入力――の3つに大別できる。利用者が増えているのが、フリック入力だ。2008年にアップルのiPhone(アイフォーン)に採用され、最近はアンドロイド端末にも搭載されている。
アンドロイド向けにいち早くフリック入力に対応したのが日本語入力ソフト「Simeji」だ。開発者の足立昌彦氏などが個人で開発、無料で配布してきたが、昨年、中国の検索エンジン・バイドゥに買収された。
顔文字・絵文字に対応
8月に公開した最新版では、長文の日本語の変換精度を上げたほか、顔文字・絵文字にも対応した。例えば「にっこり」と入力すると、変換候補に笑顔に該当する顔文字が現れる。入力画面の見た目を着せ替えできるなど、遊び心があるのが特徴だ。買収後もバイドゥ日本法人のモバイルプロダクト事業部長として開発を続ける足立氏は「コミュニケーションの手段として、今後も入力する面白さを追求していきたい」と語る。
フリック入力できるのは、同ソフトだけではない。辞書の精度や使い勝手が異なるソフトがいくつか出ている。
グーグルは昨年12月、アンドロイド端末向けに「グーグル日本語入力」を公開。フリック入力機能に加え、「きょう」と打つとその日の日付が候補に現れるなど、予測変換精度の高さや豊富な語彙が売りだ。ケイ線や矢印などの記号も入力しやすいように工夫した。
日本語入力の草分け、ジャストシステムは昨年11月から月額300円の「ATOK Passport」を提供する。最大10台までパソコンとアンドロイド端末で利用でき、登録辞書を共有できる。
ケータイ、フリック、キーボード以外の入力方法もある。「慣れた手書きで」という人はMetaMoJi(東京・港)の「7notes with mazec」を試す価値がありそうだ。ジャストシステムの創業者、浮川和宣氏がジャストシステム退社後に開発した。手書きでの日本語入力に対応。「会ギ」と入力しても「会議」と変換候補を表示するなど、交ぜ書きにも対応している。
「キーボード入力が難しい人はいても、文字を手書きできないという人は少ない。最もハードルが低い入力システムだ」(浮川氏)と自信をのぞかせる。
アンドロイド向け
なお、今回紹介した日本語入力ソフトはいずれもアンドロイド向け。iPhoneは現状では標準搭載しているものを原則、使うことになっている。ATOKや7notesのiPhone用アプリもあるが、ウェブ検索時の入力などには使えず、用途が限られる。
日本語入力は頻繁に使う基本機能の一つ。自分の用途に合ったものを探せばスマホの利用がいっそう快適になるだろう。
(電子整理部 武藤邦雄)
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