しかし、特定の抗菌薬の使用が増えると耐性菌も出現しやすい。昨年からの流行がやまず、今年はオリンピックと重なった。

耐性菌は2000年ごろから少しずつ増加。北里大学北里生命科学研究所の調査では、10年ごろには約60%が耐性を持ち、11年には85%を超えた。耐性菌の場合は、「テトラサイクリン系やニューキノロン系と呼ぶ薬を使わないと治らない」(田島副院長)。

一般的な病気であるマイコプラズマ肺炎だが、早期に確定診断するためには専門の設備などが要る。診療所などの医師は、症状やレントゲン写真などから原因を推測し薬を決めているという。

国立感染症研究所が今年1月、全国の病院に入院した約760人の患者を調べたところ、最初の治療では約6割がマクロライド系を使っていた。耐性菌に効くテトラサイクリン系やニューキノロン系の薬は10%以下。熱が下がらず薬を切り替えた場合は、これらの薬が増えた。

薬の選び方慎重に

耐性菌が急増したことで、医療機関の姿勢は変化しつつあるが、感染研の鈴木里和主任研究官は「臨床現場では投与の仕方がまだ一定ではない」と分析する。川崎医科大学の尾内一信主任教授も「医師は薬の選び方に、より注意が必要になった」と話す。

11年4月に改訂された日本小児感染症学会などの治療指針では、マイコプラズマ感染が疑われる場合、まずはマクロライド系の薬を使い、2~3日しても熱が下がらない場合は、テトラサイクリン系やニューキノロン系の薬を使うよう推奨している。

ただ、効き目の高いテトラサイクリン系の中には、8歳未満の子供に長く使うと歯が黄色くなる可能性がある薬も存在するので、医師と十分相談しよう。

マイコプラズマに感染しても自然に治る例はある。だが、高熱はつらいうえ、流行すると合併症として髄膜炎などを起こす人の割合も増えてくる。「治療は早めに受けた方がよい」(尾内教授)。普段から手洗いを励行し、感染しせきが出たら、マスクを着用することなども心がけたい。専門家の間では、今回の流行は年内にも落ち着くという見方が強い。

(西村絵)

[日本経済新聞夕刊2012年8月3日付]

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