パソコンのデータ、ネット経由でバックアップする方法

パソコンが壊れたとき、問題になるのは保存していたデータだ。パソコンは修理するか買い替えれば作業を続けられるが、パソコン内の記憶装置が故障すると、保存した文書は消えてしまう。そうなる事態に備えて、文書などのデータは必ずバックアップを作っておくことが大切だ。

USBメモリーなど別の媒体に文書のコピーを保存している人もいるが、問題もある。USBメモリーは小さくてなくしやすいうえ、きちんと保管しないとデータを盗まれる危険もある。CD、DVDなどの媒体も同じだ。

そこで最近、便利なバックアップの方法として注目されているのが、クラウドストレージ。遠隔地の施設（データセンター）に設置した記憶装置に、ネット経由でデータを保存しておく方法だ。まるで雲（クラウド）の中に保存（ストレージ）するようだと、この名前がついた。「オンラインストレージ」ともいう。

現在は個人が簡単に扱えるクラウドストレージが増えている。スマートフォン（高機能携帯電話=スマホ）など携帯端末からでも簡単に利用できる。しかも大量のデータを扱うのでなければ無料だ。

パソコン向けクラウドストレージの利用は簡単だ。最初に準備作業をしておけば、通常は特に意識せず、パソコンの中の指定フォルダー（収容する場所）に文書を保存するだけでいい。

準備として必要なのは、クラウドサービスが無料で提供する専用のソフトウエアをインストール（導入）することだ。パソコンの使用中、このソフトウエアは指定したフォルダーを監視する。新しい文書が作成されたり既存の文書が編集されたりすると、その文書を自動的にネットでデータセンターに送信する。これがバックアップになる。

パソコンが壊れたときは、新しいパソコンに同じ専用ソフトウエアをインストールすればいい。バックアップした文書などのフォルダーのデータを呼び出せば、新しいパソコンの中に復元できる。

パソコンが壊れなくても、この仕組みは利用できる。別のパソコンにも同じフォルダーが再現でき、複数のパソコンで同じフォルダーを共有することが可能になる。

東京の作業場と大阪の作業場で別のパソコンを使っても、同じフォルダーを扱うことになる。フォルダーの中の文書は常にデータセンターに保存している文書と同一に保たれているので、東京の作業を大阪で継続できる。

スマホなどで撮影した写真をクラウドストレージに保存すれば、自宅や作業場のパソコンから取り出せる。サービスによっては専用ソフトウエアがなくても、インターネット閲覧用のブラウザーから該当フォルダーが扱える。

大きなファイルの転送にも利用できる。何十メガバイトもの文書を電子メールに添付して直接、送ったら、受け取る人は迷惑かもしれない。こんな場合はクラウドストレージに保存して、そこから相手に適時、ダウンロードしてもらうことができる。多人数への文書の配布にも利用できる。

クラウドストレージには注意点もある。パスワードが流出すると、データが盗まれる危険がある。パスワードの管理は厳重にしたい。

大手で実績あるサービス会社は対策を用意しているが、サービス側のトラブルが原因で、保存したデータに問題が発生する可能性もゼロではない。一定期間がたったら別のクラウドストレージにバックアップするなど、予備の対応も検討するとよいだろう。

（テクニカルライター　佐藤信正）

［日経プラスワン2012年7月7日付］