画面の私は着せ替え人形 メガネや洋服、ネットでお試し
本やDVDを中心にインターネットでの買い物は一般的になってきた。だが、洋服やメガネなど実際に身につけるものは試着ができないため、ネットでの買い物を敬遠する人も少なくなかった。こうした不安を打ち消そうと、最近では自分の写真をもとに、店舗にいるような気分でネット上で「お試し」ができるサービスが増えている。
メガネ専門店「JINS」を展開するジェイアイエヌは、今年3月から気に入ったメガネをかけた自分の姿をウェブ上で確認できるサービス「Salon de MEGANE!」を始めた。1枚の顔写真を用意するだけで、店頭に足を運ばずにいろいろなメガネのかけ比べを楽しめる。
お薦め商品を選別
手順は簡単だ。自分の写真をアップロードすると、ウェブ上で3D画像へ転換。「丸顔」「面長」など、顔のタイプを自動判定したうえで、似合うメガネをすすめてくれる。気に入った色とメガネを選べば完了。3D化された自分の顔を上下左右に動かして、いろんな角度から似合うかどうかを確認できる。
現在お試しできるメガネフレームはJINSで取り扱っているメガネ全体の約3分の1にあたる550種類にとどまっているが、今後追加していく予定。低価格メガネでJINSと双璧を成す「Zoff」を運営するインターメスティック(東京・渋谷)でも同様の試着サービスを提供している。
「おひとり様3点まででお願いします」。店頭ではこんな制限がかかることも多い洋服の試着も、ネットなら気が済むまで楽しめる。アヴィエラン(愛知県尾張旭市)が運営するサイト「AWASEBA」を使えば、自分の写真に気に入った洋服を着せて、買うかどうか判断できる。サービス開始当初の2008年に比べ、人気セレクトショップ「SHIPS」や「JOURNAL STANDARD」「nano・universe」など参加ブランドには人気店が増えてきた。
衣料品をネットで購入する場合、最大のハードルは購入時に思い描いたイメージと、実際に届いた商品とのミスマッチを減らすこと。これまでも返品サービスの充実や、モデルの身長・体重まで公開するきめ細かいサイズ情報の提供などで、徐々に市場を拡大してきた。バーチャル試着が定着すれば、普及に一段と弾みがつきそうだ。
落とす手間なく
デパートの店頭で、美容部員に「お試しメーク」をしてもらうのがステータスだった化粧品も、画面上で気軽に試せるサービスが増えてきた。今年4月からインターネット通販を本格化させた資生堂。美容情報サイト「ワタシプラス」に会員登録すれば、自分の写真上でアイシャドーや口紅、チークなどを試せる。店頭だと一度つけた化粧を落とす手間がかかるが、ネット上ならワンクリックで済むところも魅力のひとつだろう。
資生堂はさらに、オンライン動画と電話を組み合わせたメークレッスンも始めた。レッスンはファンデーションなどの「ベースメーク」とアイシャドーなど「アイメーク」の2コース。レッスンを頼みたい美容部員も自分で選べる。基本は予約制だが、あいていればすぐにレッスンを受けられる。こうしたネットサービスには「敷居が高いとされがちな店頭に足を運ぶきっかけになれば」(資生堂広報)との狙いもある。
いまやネットで買えないものはない時代。技術の進歩に助けられ、我が家にいながら店頭とほとんど変わらずにショッピングを楽しめる分野が増えてきた。本やマンガの「試し読み」、CDやDVDの「試聴」、さらに洋服やメガネの「試着」まで可能になってきたいま、待ち望まれるのはバーチャルな「試食」技術の確立だろうか。
(経済部 平野麻理子)
[日本経済新聞夕刊2012年6月7日付]
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