病院の「医療事故」対応に変化 隠さず説明、ミス謝罪

医療事故が起きた際、患者や家族に隠さず事実を伝え、ミスがあればすぐに謝罪する医療機関が増えている。「謝罪は訴訟で不利になる」と考え、ミスが分かっても頑として非を認めない医療機関が少なくなかったが、真実を説明する姿勢が患者側との信頼関係を回復させ、紛争防止にもつながっている。ただ再発防止のための事故調査体制は不十分なままで、厚生労働省は約3年ぶりに医療事故調査の議論を再開している。

全国51の社会保険病院を運営する全国社会保険協会連合会(全社連)によると、51病院が2010年度までの4年間に患者などに損害賠償金を支払ったと報告した医療事故は146例。このうち病院側が事故後に責任を認めて謝罪したのは08年9月までの68例で26例(38%)だったが、同年10月以降の78例では42例(54%)で半数を超えていた。

「心情共感」指針も

割合が急増した背景には全社連が08年9月から新たに導入した「医療有害事象・対応指針」がある。

事故直後は原因が明らかでないことが多い。このため全社連の旧指針では「担当医などは患者への親切心などにより、個別的な感情や判断で安易に責任を認めたり、補償を約束したりすることは厳に慎む」としていた。だが新指針では「ミスがあった」と判断した場合は即座に「過ちを起こしました。申し訳ありません」など患者や家族に「責任承認謝罪」をしなければならないと明記した。

さらに新指針ではミスが明らかでなくても「期待に応えることができなかった」「このようなことが起きて残念です」など患者や家族の心情に共感する「共感表明謝罪」も伝えることとした。共感表明謝罪を表明した割合は新指針導入前後で3割強など横ばいだが、責任承認謝罪の広がりもあり、示談や和解で解決した割合は策定前の3割から策定後は5割に増えた。

訴訟に発展したケースも策定前は12例あったが、策定後はゼロ。全社連の伊藤雅治理事長のほか、医療事故被害者などが加わり、こうした状況を分析した東大研究チームは「事故発生から訴訟までは平均3年半。さらに経過を見る必要がある」としながら、「過誤や過失がない事例でも共感表明謝罪を一般的な考え方として普及させることが、医療に対する国民の信頼回復につながる」と提言した。

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