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女性に多い病気、甲状腺疾患 免疫機能損ね自己攻撃

2012/3/10 日本経済新聞 夕刊

なぜ女性に自己免疫疾患が多いのか。国立精神・神経医療研究センターの山村隆免疫研究部長によると、有力な説は次の2つだという。一つは性ホルモンの違い。やはり女性に多い「多発性硬化症」の動物実験で、男性ホルモンには免疫が自身に向かうのを抑える働きがあったが、女性ホルモンにはなかった。もう一つは、性染色体にある自己免疫に関係する遺伝子の影響が疑われている。

甲状腺の病気に早めに気づくには、症状が似ている更年期障害やうつ病などと区別することが大切。「自ら甲状腺の病気を疑い、病院で検査してもらうのがよい」と金地病院(東京・北)の山田恵美子院長は指摘する。

命の危険はない

山田院長は自己チェックシートを作成。甲状腺の腫れがなくても、「発汗増加」「手足が震える」など症状が4つあてはまればバセドウ病を疑うべきだと訴える。また、「疲れやだるさがある」「記憶力が低下する」などの4症状があれば、橋本病の検査をするのが望ましいという。

この2つの病気とも治療薬があり命の危険を心配する必要はない。バセドウ病は手術や放射線で細胞を死滅させる放射性ヨード療法もある。治療法も男女に差はない。ただ、女性に多い病気なので治療薬と妊娠・出産の関係はおさえておきたい。

バセドウ病治療で一般的に使われる「メルカゾール」は、効果が高く副作用も少ないが、妊娠初期に服用すると、まれに子供に先天異常が起きることがある。そこで、国立成育医療研究センター母性医療診療部の荒田尚子医長らが因果関係を詳しく調査し、昨年秋に中間報告をまとめた。

妊娠初期に母親がメルカゾールを飲んだケースでは、子供85人中5人で、へそに関する異常や頭の皮膚の一部が欠損する異常がみられた。これは従来報告があったのと同じ異常で、いずれも手術で良くなった。「メルカゾールと先天異常は関連が強く疑われる。ただ調査対象は特殊な群と考えられ、実際の発生頻度はもっと低いだろう」と荒田医長は話す。

妊娠初期のメルカゾール服用をできるだけ避けるには、医師と相談し計画的に妊娠することが大切。基礎体温を付け妊娠に早く気づくことも重要だ。この期間に別の薬を服用するなどの対策が取れる。同研究センターでは「妊娠と薬情報センター」を設けており、ここに申し込めば、全国にある拠点病院で相談できる体制になっている。

橋本病でも甲状腺の機能低下が胎児に悪影響を与える恐れがあるので注意したい。金地病院の山田院長によると、薬を普段使っていなくても、妊娠時は甲状腺の機能が少しでも下がったら、ホルモン剤を投与するという。患者は機能低下を助長するヨードを多く含む昆布を食べ過ぎないことも大事だ。

(辻征弥)

[日本経済新聞夕刊2012年3月9日付]

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