惑わされない…「口コミサイト」の上手な活用法
ネット上にある様々な口コミ情報サイト。お金と手間をかけずに調べられるうえ、広告とは違い「利用者の本音が聞ける」と頼りにする人も多い。ただ、飲食店の口コミサイト「食べログ」でやらせ投稿が発覚するなど信頼性を疑う声も出ている。膨大な情報に惑わされない上手な利用法を専門家に聞いた。
口コミサイトを選ぶ際、どの分野でも投稿数と参照件数の多いところは情報量が豊富で使いやすい。大きなサイトには賛否両論の口コミがあり、バランスもとれている場合が多い。サイトの大小にかかわらず、運営会社の住所や連絡先、口コミ投稿の基準が明記されていることが信頼性の目安となるだろう。
広告と口コミの区別がはっきりしていることも大切だ。口コミサイト運営企業などが参加するWOMマーケティング協議会(WOMJ、東京都港区)では、企業がブロガーやネット利用者に依頼して、強制的に商品を紹介させているケースは広告に当たると定めている。依頼の内容が書き込みに明記してあるかどうかチェックしよう。
サイトの見方で一番重要なのは総合評価の点数やランキングだけで判断しないことだ。総合評価は性別や年齢、嗜好が異なる人々の意見が集約されたもの。仮に高評価を得ていても、自分に合うとは限らない。
点数のつけ方もサイトごとにバラバラだ。単純に集計した評価の平均点を出すサイトもあれば、食べログのように「口コミ投稿数や投稿者ごとの影響度などを加味して独自に算出している」(運営会社のカカクコム)ところもある。
WOMJのガイドライン作成に携わったブロガーの藤代裕之さんは「全体評価の点数はあくまで参考にとどめ、過度な期待をかけないように」と注意を呼びかける。
正確な情報を得るためにはコメントもしっかりと読み込もう。飲食店や化粧品など、好みの個人差が激しいものは点数にこだわらず、自分と似た嗜好の人の書き込みを参考にすると良い。気に入った人がいたら、その人の過去の書き込みも参照してみよう。
味や性能、サービスなど自分が重視するポイントを絞って見ることも大切だ。ネットマーケティングに詳しい首都大学東京大学院の水越康介准教授によると「口コミは接客などサービスの良しあしが評価に直結しやすい」という。飲食店などで「味が良ければ接客は気にしない」という人などは、点数に引っ張られ過ぎないようにしたい。
飲食店や宿泊系などサイト数が多いものは複数巡って比較する。サイトにより評価が大きく異なる場合はコメントを詳しく読んで理由を調べたい。雑誌や新聞、友人の評判などネット以外の情報と照らし合わせることも有効だ。
口コミを投稿する際は、点数の根拠と自分の嗜好や体調など詳しい背景を書き込もう。参考になった投稿をまねるのも良い。接客が悪かった場合などは感情が高ぶり、冷静な分析ができないこともあるので時間をおいて書く。どんなに腹が立っても誹謗(ひぼう)中傷は絶対にしない。
口コミサイトを揺るがしたやらせ問題だが、実際に利用者がやらせを見抜くことはできるのだろうか。
マーケティング会社ハー・ストーリィの高橋ひろ子統括部長は「怪しいケースはあるが、ネットに慣れた人でも完全に判別することは難しい」という。ただ、過去の投稿がすべて高評価の人や、短期間に高評価の投稿が急増した店や商品などは「評価を多少割り引いてとらえた方がよい」(水越准教授)といえる。
やらせを気にしすぎ、高評価をすべて疑っていては気軽に口コミサイトを使えない。現実の世界にも評価が甘く、信頼性に欠ける人はいる。「ネットの口コミだからと信頼しすぎたり、逆に身構えず、現実と同じように情報を整理し判断する」(藤代さん)姿勢が大切になるだろう。
(田中裕介)
[日経プラスワン2012年2月11日付]
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