ランゴ
粋なマカロニ西部劇アニメ
ペットのカメレオンのランゴが、未知に挑戦する姿がキュートでちょっとシニカルなアニメーション。
砂漠を走行中の車から水槽ごと転落、西部の辺境の町ダートに迷い込み、ついその気になって保安官を買って出たお調子者が彼。という話は1960年代半ばに世界を席捲(せっけん)して画面を硝煙と砂埃(すなぼこり)で覆ったイタリア製西部劇、通称マカロニ・ウェスタン調の仕立て。ランゴの名は代表作の1つ『続・荒野の用心棒』の主人公ジャンゴを思わせる。
アニメといっても吹き替えの俳優たちが衣装をつけて本格セットで演じながら録音する様子を撮影、身体の動きや表情をそのままキャラクターに生かした、というだけにランゴの姿が吹き替えのジョニー・デップ本人に見えてくる。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の最初から3作目までを手がけたゴア・ヴァービンスキーが監督・製作・原案。初のアニメだけに遊び心とヤル気は満々。 砂漠の町の銀行にはお金の代わりに水が蓄えられ、貯水バルブの開閉が駆け引きに使われる。悪役の蛇ジェイクの尻尾はマカロニ西部劇お馴染(なじ)みのガトリング銃になっているという凝りっぷり。時々フリーズしてしまう牧場主の娘はトカゲで、市長は固い甲羅の悪徳カメ。と誰もが一筋縄ではいかず、ポンチョにテンガロン・ハット姿でランゴの前に突然姿を現すのがどう見てもイタリアで3本の西部劇に出演した過去を持つ現在の超大物監督……。
相手にあわせてころころ変わる自分に嫌気がさし、真の自分を見つけようと努力する、というところでランゴがカメレオンであることが生きてくる。そんな変化と成長の(!)ドラマは、フクロウのマリアッチ4人組の歌で軽妙に語られることで洗練されて粋な大人の味があるものになった。1時間47分。
★★★★
(映画評論家 渡辺 祥子)
[日本経済新聞夕刊2011年10月21日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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