ザ・ウォード 監禁病棟
活劇の骨にホラーの肉
ジョン・カーペンター監督は、「ハロウィン」(1979年)、「遊星からの物体X」(82年)等で、ホラーの巨匠として評価が高い。が、同時に彼は、すぐれたアクション映画作家の資質をもっていることも見おとせない。
火星を舞台にした西部劇のような「ゴースト・オブ・マーズ」(2001年)から、なんと10年もの沈黙をへてはなった、この「ザ・ウォード 監禁病棟」も、サイコ・ホラーとしてのすぐれたアイデアの肉が、アクション映画的な頑健な骨にささえられて、みごとな躍動を見せる。CGを濫用(らんよう)したコケおどしではなく、見る者の肉体にとどく恐怖だ。
主人公は20歳の女性である。クリステンという名のヒロインを演じるのは、「ドライブ・アングリー3D」の新星アンバー・ハード。
ブロンドで、清純さがありながらミステリアスでセクシー。映画の設定の1960年代の雰囲気も身につけている。
まず、1926年創立という精神科病院が紹介され、早くも、その1室、「タミー」と名前がかかれた病室で、わかい女性が何かに襲われ恐怖に叫ぶ……。
拷問(精神治療?)の絵の数々をバックにタイトルが出たあと、一転して明るい陽光の下、裸足(はだし)に下着すがたのヒロイン、クリステンが、道路をはずれたところを走っている。そして1軒の家に火をつけ、パトカーで、冒頭の病院に連行される。
「タミー」のものだった病室に閉じ込められたあと、同じフロアの同年配の女性4人と親しくなるが、彼女たちは1人、また1人、何者かに襲われ消えていく。
最後に恐怖の秘密が、アッとおどろく解決をされるまで、アンバー・ハードのアクションにひきつけられ息をつぐ間もない。
1時間29分。
★★★★
(映画評論家 宇田川幸洋)
[日本経済新聞夕刊2011年9月16日付]
★★★★☆ 見逃せない
★★★☆☆ 見応えあり
★★☆☆☆ それなりに楽しめる
★☆☆☆☆ 話題作だけど…
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