口の中で歯茎の腫れや骨の分解を引き起こした化合物は、血液に乗って全身を巡って、糖尿病や動脈硬化など生活習慣病の進行に関わる。世界各国の疫学調査によると、重症な歯周病によって狭心症や心筋梗塞といった心疾患のリスクは2倍、がん発症リスクも2倍になる。出産を促す作用の化合物もあり、妊娠している女性では早産で低体重児を産むリスクが5倍高くなるとの報告もある。

歯周病菌の対策は口の中を健康に保つことに尽きる。当たり前のことだがまずは毎日の歯磨き。ちゃんと毎食後に磨いていると主張する人の中にも「時間をかけているだけでプラークが取れていない人も多い」と佐瀬歯科医院(千葉市)の佐瀬聡良院長は注意する。

定期的に歯科医へ

ねっとりしたプラークは、歯ブラシが当たりさえすればかき取れる。反対に、当たらないとどんなに時間をかけても意味がない。鏡を見ながらプラークが付きやすい歯と歯の間や歯茎との境界に歯ブラシが当たっているか確認しながら磨く。つまようじやツメなどで歯を軽くひっかいて白いものが付いたらプラークは落ちていない。うまく磨けたかどうかはプラークの染み出し液を使っても確認できる。

「当たる」感覚を知るために一度は医者で歯磨きをしてもらうのも効果的だ。正しい磨き方なら1日1回、歯磨き粉を使わずに水だけでも十分だ。食後にノンシュガーのガムをかみ口の中の汚れを洗い流す作用のある唾液の分泌を促すのもプラーク対策になる。

毎日きちんと歯を磨くのは歯周病予防の大前提。それでも「自力で汚れを完全に取り切るのは限界がある」と専門家は口をそろえる。磨き残したプラークが硬くなった歯石や、深くなった歯周ポケットの奥の汚れは歯科医院の専門家の助けを借りて定期的に取っていくしかない。佐瀬歯科医院ではきちんと歯磨きができている人なら半年に1度程度、歯周病が進行気味の人は、2、3カ月に1度程度のチェックを進めている。

歯医者通いは苦手な人が多く、本当は治療が必要な人のうち実際に通院している人は20~30%程度とされる。「どうやって歯医者に行ってもらうか、どう受診率を上げるのかが歯科医の悩み」(和泉教授)。歯周病の場合はもっと前の予防から取り組む必要があるため、何も自覚症状がない時から定期的に診てもらうのが理想的だ。歯と全身の健康を考えて、通院の習慣を確立する必要がある。

(鴻知佳子)

[日本経済新聞夕刊2011年9月2日付]